Q:台湾のキャスティングはどうされたんですか?
監督「もともと僕は、現地で出会ったおじいさんやおばあさんに頼んで、ドキュメンタリー感覚で撮って行こうと思っていたんですが、撮影日数が21日しかないとか、順番に段取りよく撮って行くのは難しいということがありました。さらに今回は子どもたちが主役で、子どもたちに焦点を合わせなくてはならないので、おじいさんたちに合わせて、おじいさんと子どもを組合わせると大変なことになるという危惧があったんですね。なので、それは台湾のスタッフに相談して、あちらでキャスティングして欲しいということで、プロの方と組みました」
Q:すごく豪華な共演者たちですね!
監督「皆、ホウ(ホウ・シャオシェン監督)組のレギュラーさんですね」
Q:今回はチャン・ハンをじっくり観られたのがうれしかったのですが、以前に『遠くの空に消えた』でお仕事をされたチャン・チェンとは違いますか?
監督「ぜんぜん違います。チェン・チェンはとても鋭くてシャープな人。だけど、お兄さんはおおらかで天然な人ですね(笑)。あのまんまで…。彼は監督もやってる人だから、勉強熱心で、内容についてもいろいろと話しかけて来るんですが、気さくなんですよね。すごく自分の生理で芝居をするんですよ。『俺はそう思わないよ』って…『いやいや、そういう役だから』て言っても『俺はそう思わないからなあ』っていうところがあって。奥さん役のワン・ファンにバ〜ッと言われるシーンがあるんですけど、『ほんとに腹が立ったよ、おまえ!そういう言い方ないだろう!』って…面白かったですね(笑)」
Q:自然にやってらしたんですね?
監督「すごく芝居してるって感じじゃなかったですね。彼は意図的にやってたのかもしれないけど、子どもとの接し方もそうだったし。けっこう、天然な人ですね。」
おじいちゃんの家での食事シーン。ホウ・シャオシェン作品を彷佛とさせるカメラは自然な食事風景を切り取っています。左が夫婦役のチャン・ハンとワン・ファン(手前)。 |
Q:チャン・ハンは監督もやっていて川口監督と年齢も近いですが、一緒に話して盛り上がったことはありますか?
監督「彼は『なんで、これ撮りたいの?』て、すごく知りたがってましたね。日本語が話せるおじいさんがいるっていう世界観は、僕らにとっては驚きなんですけど、台湾人にとってはあたりまえなんですよね。だから彼らには、どうして今これをやりたいのかわからないっていうのがあって、それを僕が必死に説明しました。そこには、台北に住んでる彼らが田舎に住んでいる両親をどうすればいいのかという彼ら自身のリアルな問題もありました。都会が便利だから都会に来て欲しいけれど、両親は生れ育った所を離れたくない。それは、台湾の地方都市や村社会をどういう風にしていけばいいかという問題でもあるんです。彼らはそこにすごくリアルな葛藤があって、僕はその物語を聞きたいというのがあって、炒飯でも食べながらその話を聞きました。彼自身の家族のこととか、台湾の青年たちが抱えている、親に対する家族という組み方の問題を彼から教えてもらい、反映させています」
Q:この作品は台湾でも公開される予定ですか?
監督「まだ時期は決まっていませんが、する予定です」
Q:台湾に続いて2作目『チョルラの詩』は韓国と、アジアでの合作が続いています。ずっと日本の現場を経験してから外に出ると、やはり違いますか?
監督「ええ。それがもともとやりたかった事なんです。外国の方とコミュニケーションを取るのが大好きと話しましたが、合作をやっていた助監督時代に、言葉の違う人たちが同じものを作るという面白さをたくさん知って、そのやり方やノウハウを勉強したので、自分が撮るときはそれをやってみたいというのがありました。それに正直なところ、日本国内の風景で撮影に耐えられるような場所が少ないのです。どこへ行っても電線やガードレールがある。映画としてぱっと観せた時に、どうすれば『ああ、こういう場所すごいな!』と皆さんが感動してくれるような風景、非現実的な空間に誘えるかなというと、外国、特にアジアの方が力があると思っています。もちろん、日本でも撮りたいですが」
Q:では、3作目もアジアでしょうか?
監督「そういう話が来てくれれば…。ただ、今は日本でやりたいと考えています」
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