夜明けの詩
(誰もいない場所/Shades of the Heart)
story
小説家のチャンソク(ヨン・ウジン)は、イギリスから7年ぶりに帰国。久しぶりに、ソウルでの日々を過ごす。
駅構内にある喫茶店。チャンソクが本を読んでいると、目の前でうたた寝をしていたミヨン(イ・ジウン/IU)が目を覚ました。彼女は初対面の人に会ったような反応をするが、友人に紹介されて見合いの最中なのを思い出す。小説は作り話だからくだらないというミヨンに、チャンソクは5つ星ホテルに泊まったホームレスとベルマンの話を聞かせる…。
チャンソクは大学の後輩で出版社で働くユジン(ユン・ヘリ)と会った。彼の小説の出版を手伝っているのだ。公園で小説の話をする内、夜が深まってきた。ユジンはタバコを吸い始める。燃える音がする珍しいタバコだ。チャンソクは興味を持ち、やめたタバコを試してみる。ユジンは、インドネシアの留学生とつきあっていた時の体験を話し始める…。
カフェにいたチャンソクは、知り合いのカメラマン、ソンハ(キム・サンホ)と偶然に再会する。近況を話すうちに、彼の妻の乳がんが再発し容体がよくないことを知る。ソンハはやっと手に入れた青酸カリの小瓶を見せ、妻が逝ったら飲むつもりだと言う。だが、仁寺洞の寺院で僧侶に会って不思議なことが起こったと話しはじめる…。
バーでメモを書くチャンソクに、バーテンダーのチュウン(イ・ジュヨン)が話しかけてきた。今日で店を辞める彼女は、客の話を聞いて詩を書いている。それは、事故で記憶の大半を失くした彼女が記憶を埋める行為でもあった。チャンソクは学生時代にあったウサギ騒動を話して聞かせる…。
夜。路地裏を歩き回るチャンソクは、電話ボックスからイギリスの妻に電話をかける。「今ならやり直せる。会いたい」「スヨンもパパに会いたがっているわ」それは死んだ娘の名前だ。夢から目覚めたチャンソクは…。
アジコのおすすめポイント:
イギリスから帰国した小説家が、心に闇を抱える人々との出会いを通して内省し、自分自身の闇と向き合っていく姿をじっくりと、まさに夜明け前の薄明かりが見えるまでの時間のように静かに描いたヒューマンドラマです。冒頭の喫茶店でのシーンから、まるで夢を見ているような感覚。まどろむ女、昼間からビールを飲む編集者、夕暮れの公園、青酸カリを持ったカメラマン、記憶をなくしたバーテンダーと、それぞれのエピソードが夢や詩のように綴られていきます。この不思議なテイストの作品を作ったのは、『窓辺のテーブル 彼女たちの決断』が配信中のキム・ジョングァン監督(『ジョぜと虎と魚たち』)。主演はヨン・ウジン(『愛に奉仕せよ』)。出会う人々を『ベイビー・ブローカー』で一躍注目されたイ・ジウン/IU、ユン・ヘリ、キム・サンホ、イ・ジュヨンが演じます。薄暗がりの中、長回しで静かにまどろむように進む映像がとても美しいので、睡眠時間をしっかり取ってから味わってください。
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