今回は初めて『プリミティブ・プロジェクト』という、アート作品とインスタレーション、短編映画、写真、本、そして長編劇映画を、同じ傘下で資金を集めて展開できました。美術館が出資したり、映画の配給会社が出資したりしていて、一人の作家のいろんな作品に対していろんなパートナーが手を組むという方法を、今回は選びました。このプロデューサーのサイモン・フィールドという人は、場合によっては、長編映画の新しいファイナンシングの方法かもしれないと話しています」
Q:猿の精霊が好きなんですが、これは『スター・ウォーズ』のチューバッカや『2001年宇宙の旅』の冒頭に出て来る猿人を思い浮かべました。この作品はアートフィルムですが、SF映画の影響もあるのでしょうか?
アーティストとしても活躍する監督の素顔は意外とフツー感覚
|
監督「たくさん影響を受けました。子どもの頃は、スピルバーグからたくさんインスピレーションをもらいました。12歳の時に『ET』が上映され、特殊効果のハリウッド映画やディザスター映画があるとすぐに観に行かないと気がすみませんでした(笑)。何百人もの人が20秒間の映像のために仕事をしているかと思うと、それはすごいなあと。産業としてのハリウッドは尊敬せざるを得ません」
実際に監督と会うまでは、繊細で気難しい人かもと緊張していたのですが、1つ1つの質問にやさしい口調で丁寧に答え、質問以上にたっぷりと答えてくれるお話好き。インタビューも『え?もう終わり?』という感じで、じゃあもう1つだけと答えてくれたのが、最後の質問。少年時代はスピルバーグが好きだったと意外な一面を見せて一同を驚かせましたが、根っこは普通感覚を持つチャーミングで親しみやすい人という印象でした。
『ブンミおじさんの森』が多面的な構造を持っているのは、アーティストならではの視点が表現されているから。映像やショート・ストーリーのコラージュ的な作品と言ってもよいかもしれません。そこから何を感じ取るかは観客の自由。映像を楽しむもよし、個々のストーリーを読み解くもよし。自分の感性で楽しんでください。
(2010年12月2日 渋谷にて4媒体合同取材/photo提供:ムヴィオラ)
最後に、3月11日に発生した大震災の影響で、シネマライズでは初回と最終回の上映を中止していましたが、3/26より通常通りの上映が再開されています。(状況により変更もあり得るので、事前にご確認ください)また、3月16日の公式ブログに監督からのお見舞いメッセージが掲載されていますので、ここに転載させていただきます。
「Dear All,
I hope you, your relatives, and loved ones are all right.
Sending you my deep consolation. Stay safe.
Worried
Apichatpong Weerasethakul」
前後を読む P1 < P2 < P3 ▼作品紹介