●衣装について
見どころはたくさん登場する衣装だと思いますが、出演者たちが選んだのですか? それとも監督が決めたのですか?
タン「基本的には、まず僕が構想を練り、衣装デザイナーと一緒にこうしたい、ああしたいといろいろアイデアを出し合いました。目的は歌をメインに、歌を表現するために、こういう風にしようと決めました」
役者からの希望はなかったのですか?
タン「特にはなかったのですが、できればオーバーな服を着たいと言っていました(笑)。たしか、一番重かったのは黒いかぶり物を着けたやつで、あの衣装だけで8キロくらいありました。重たい飾りを着けて歌ったので、途中でフラフラして気絶しそうになっていました(笑)」
実際のゲータイもあのような衣装なんですか?
タン「以前は、ほんの何人かの歌手が派手な衣装を着て歌っていましたが、ほとんど稀でした。ただ、この映画が公開されてからは、ゲータイ歌手の皆がこの路線になり、背中に羽を着けて歌うようになりました(笑)」と、通訳中も監督は愉快そうに笑っていました。
それだけこの映画の影響が大きかったのですね?
衣装は約200着も用意された! (c) Courtesy of Zhao Wei Films
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タン「大きかったと思います。また、一般の人たちのゲータイに対する関心がとても高まりました。一方で歌手たちも、ますます衣装にこだわり始め、今年のゲータイは来月からなんですが、歌手たちは今から注文をして、より大きな衣装、よりオーバーで派手な衣装にして、観客をびっくりさせようと凝っています」
ちょっと紅白歌合戦の小林幸子さんを彷佛とさせますよね?
タン「毎年、紅白は観ているんです(一同爆笑)。(日本の)皆さんもすごいですよね(笑)。実は撮影中も、日本の歌手の皆さんはどういう風な衣装を着ているのかと、ネットサーフィンをしてリサーチしました。紅白を観ていると、衣装というよりも、ステージそのものが衣装になっているように見えます。それは素晴らしいです」
パパイヤ・シスターズに比べて、ライバルのドリアン・シスターズは歌もファッションも現代風になっていました。この対比に込めたものは?
タン「シンガポールの社会現象を表現しようと思いました。我々の社会、特にアジアのほとんどがそうですが、いわゆる西洋文化の影響を受けていて、アジアの諸国をどんどん侵食しています。そこでドリアン・シスターズには、まさに西洋文化を代表させました。歌だけでなく、彼女たちがしゃべっている言葉や生活様式まで対比させました」
●シンガポール映画界と次回作品
文化的な面で、シンガポールの方たちは派手な方がいいという意識なのでしょうか?
タン「この映画を撮っている時、派手な衣装を着けて歌うということに対して批判がありました。お前たちがやっているのは時代遅れだと。昔はこういうのもあったけど、もう流行らないぞと。でも、映画が公開されて流行になってしまうと、時代遅れのはずのものが今また流行になり、これからどうなるのかゲータイ歌手たちも戸惑い始めました。ところが、派手な衣装を着けると反応がよくてウケる。そこで皆は、レトロブームなんだろうと話しています」
最近のシンガポール映画界は活気づいていると聞いています。どのような状況か教えてください。
タン「ここ1〜2年は景気がいいようです。商業映画もわりと成績がよかったんですが、不思議なことに、アート系の映画もフランスのカンヌ国際映画祭や海外メディアからとても注目されました。以前は10何年の間にせいぜい1、2本しか作られなかったのですが、たとえば今年はもう1ヶ月に4本のペースで製作されています。聞いた話では、さらにこれからまだ9本か10本くらいの映画が準備中だそうです」
それだけ、新しい監督たちが育っているということですか?
タン「そうです。独立系の監督たちも現れ、たとえば5人の若手監督がこれからそれぞれ新作を発表するようです。すごく若いんですよ。5人共、まだ21歳か23歳くらいです」
次の映画のタイトルもまた数字ですか? どんな作品になるのでしょう?
タン「そうです。次の作品のタイトルは『12 蓮花』になります。『881』の中に出て来る歌の題名で、このタイトルを使って別の映画を作りました」
最後に、この映画の見どころを語っていただきました。
タン「この映画ではシンガポールの別の側面、今までに観たことのないシンガポールの文化に触れることができます。僕たちは日本の音楽や映画をたくさん観ることができますので、今度は逆に日本の皆さんに、ぜひシンガポールの映画を観ていただき、僕たちの独自の文化や映画を作った人々の誠意を感じていただければうれしいです」
ということで、今後ますます注目されそうなシンガポール映画。今年の東京国際映画祭でも特集が準備されていると聞いています。まずは親しみやすく目にも楽しい、それでいて人生の機微を感じさせてくれるロイストン・タン監督の『881 歌え!パパイヤ』を、ぜひ劇場でご覧ください。
(2008.7.16 ユーロスペースにて2媒体合同取材)
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