2014.3.13 大阪ABCホール
去る3月13日、大阪アジアン映画祭「台湾ナイト」にて日台合作映画『一分間だけ』のワールドプレミアが行われました。世界初上映ということで、ガン・リーと吉田正大という日台双方のプロデューサー、チェン・フイリン監督、主演のチャン・チュンニン、ピーター・ホー、日本側のキャストを代表して池端レイナが登壇しました。チャン・チュンニンは主演ドラマの撮影もあり多忙な中での来日で、日本の映画ファンに直接この映画について話ができたのはこの時だけ。とても貴重な機会で、チケットも前売り完売で追加発売が出たほどです。超満員のワールドプレミアでガン・リーは
ワールドプレミアの前に行われたカフェパーティにて(大阪アジアン映画祭事務局提供)
池端レイナ、吉田正大、ガン・リー、チェン・フイリン監督、チャン・チュンニン、ピーター・ホー
ガン・リー「アン・リーは私の兄でトラの映画(『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』)を撮ったのですが、私はトラを撮れないので犬の映画を撮りました(笑)。人間が犬を飼うのは、人間同士ではなかなか得られない情感が犬などのペットから得られるからではないでしょうか。犬だけが本当に無条件に忠実で、それは人間ではちょっとありえないこと。また、合作によって国同士がより親しくなれると思います。この映画で申し訳なかったことは、ピーターの肉体美を披露できなかったことです(笑)」
とジョークを交えながら、今回のコラボレーションがスムーズだったことをさり気なくアピール。今回が劇場公開作の処女作となったチェン監督は、開口一番「すみません、肉体美を見せることができなかった監督です(笑)」とプロデューサーの一言を拾って笑いをとりつつ、
チェン監督「この映画は、制作する過程で私たち全員が命の大切さ、愛の大切さ、そして今この時間を本当に大切にしようという思いを得ることができました。私にとっては単なる映画ではありません。この映画を完成させることで、ここにいる人たちとの友情を深めることができましたし、皆で命の大切さを知ることができました」
とこの映画から得たものについて語りました。過去に『T・R・Y』や『劇場版仮面ライダー555 パラダイス・ロスト』『着信アリ2』など日本映画に出演した経験を持つピーターは、この日台合作映画への出演について「確かに僕は日本映画に出ていますけど、日本映画ではいつも悪役なのです。ちょっと善さそうな人のときもありますが、やっぱり悪役なのです」と何やら気になる言い回し。
ピーター「『一分間だけ』は、僕に非常に啓発を与えてくれました。僕は時間に対して厳格というか、時間を計ってきっちりと過ごすタイプなのです。寝るとか食べるとか。ひじょうに早食いで味わうこともなく、とにかくおなか一杯にします。要するに、動物にエサを与えているような、そういう感じなのです。それで、すっぱいとか辛いとかそういうものを味わうことがあまりなかったのです。
僕はラーメン屋『一蘭』がすごく好きなのですが、今まではとにかくガーッと食べていました。辛いとか油がちょっと多いとか、麺は柔らかいほうが美味しいとか、そういうことを考えず、とにかくガーッと食べていたのですけど、この映画に出ることによって、これは辛いけどもっと辛いのがいいなとか、麺が柔らかくていいなとか、そういうふうに味わうようになりました。これは食べ物のことだけじゃなくて人生もそういうものだと思います。人生を味わうということ。結論は同じであっても、過程が大事なのだということを学びました」
これに対してチュンニンは
チュンニン「ピーターは、今、日本映画のなかではいつも自分は悪役だと言っていましたが、今回は善い人の役です。私は、これまで善い人ばかり演じていたのですけど、この映画ではちょっと悪い役なのです。前に私たちが共演した作品では、ピーターが私を虐待するというギャングの役でしたので、今回のこの映画で私は彼に復讐することができました。私は割と自分勝手なキャリアウーマンを演じています。彼は私の恋人役で、私は彼をいじめます。私たちのチームワークはとてもよかったと思います。
犬との共演ということでは、私は彼の命を救ってあげました。ベッドの上でふたりが寝転んでいるシーンがあって、それから起き上がるのですけど、犬がベッドのまわりでうろうろしていてベッドに飛び乗ります。そのとき、犬が毎回毎回ピーターのいちばん重要な部分を踏んでしまう。犬はコントロールできないので、私は足を彼の大事な部分の上に置いて、彼のそこが踏まれないようにしました。なので、私に感謝してほしいですね」
と仰天エピソードを披露。じつは、この間、ピーターはずっと両手を体の前で重ねて彼女の話を聞いていたのですが、その手の位置が偶然にも……
ピーター「僕がさっきからずっとこういうふうに手を置いているのは、つまり防御しているわけです。ホー家を代表して、ホー家の子孫を代表してチャン・チュンニンにお礼を言いたいと思います」
ただでは済まさない、ウィットに富んだコメントを返すピーターです。最後は、ガン・リーから
ガン・リー「ワールドプレミアということで、たいへん光栄に思っています。今まで台湾映画は、台湾公開からだいたい1年後くらいに日本でやっと公開されたものなのですけど、今回、この作品は同時公開ということで、本当になかなかない機会だと思います。台湾と日本でこうした地域を超えた交流を重ねて、(ともに)映画を作っていきたいと思います。
この映画は女性の監督ですので、男性の描き方があまり男らしくないというところもあるかもしれませんが、女性が自分を見つけ出すというそういう映画でもあります。皆さんには、ちょっと足を止めて自分の人生を振り返っていただきたいと思います。気に入っていただけたら嬉しいです」
との言葉で締められ、上映に移りました。ふつうならここで終わるのですが、上映後、それまで客席で観てたと思しきピーターがひょっこり登壇し「子供のころから親父に『男は血は流しても涙は流すな』と言われて育ったんですけど、3回も涙を流してしまいました」と一言残して退場しました。(東京プレミアへ)
(文・写真提供:稲見公仁子)
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