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聖なるイチジクの種

聖なるイチジクの種(The Seed of the Sacred Fig)

監督:モハマド・ラスロフ
脚本:モハマド・ラスロフ
撮影:プーヤン・アガババエイ
編集:アンドリュー・バード
音響:フィリップ・キャンプナー
美術:アミール・パナハイファ
音楽:カルザン・マムード
出演:ミシャク・ザラ、ソヘイラ・ゴレスターニ、マフサ・ロスタミ、セターレ・マレキ、ニウシャ・アフシ

2024年/仏・独・イラン
日本公開日:2025年2月14日
カラー/シネスコ/5.1ch/167分
字幕:佐藤恵子
配給:ギャガ
©Film Boutique

2024年 カンヌ映画祭
 審査員特別賞/国際映画批評家連盟賞
 エキュメニカル審査員賞
 フランソワ・シャレ賞作品賞
2024年 シカゴ国際映画祭 脚本賞
2024年 ハイファ国際映画祭 コンペティション部門 作品賞
2025年 トロムソ国際映画祭 ノルウェー平和映画賞グランプリ
2025年 米アカデミー賞
 国際長編映画賞ノミネート(ドイツ代表)
(他多数、全31賞受賞)

poster

story

 テヘランの革命裁判所。イマン(ミシャク・ザラ)は親友ガデリ(レザ・アクラギ)の推薦もあり、皆がポストを狙う調査官に昇進する。それは判事への道が約束された予審判事職。イマンには護身用のピストルと銃弾が渡された。市民による政府への抗議デモが吹き荒れる中、彼の仕事は秘密にされており、周りには危険が潜んでいるからだ。

 家に戻ったイマンは妻のナジメ(ソヘイラ・ゴレスターニ)に報告。判事になれば、20年来の夢だった3LDKに引っ越せる。二人の娘、大学生のレズワン(マフサ・ロスタミ)と高校生になるサナ(セターレ・マレキ)も自分たちの部屋が持てると喜んだ。だが、毎晩遅く帰るようになったイマンの顔は曇っていく。調査官とは名ばかりで、実際は検事の命令で起訴状に署名するだけだったのだ。

 レズワンが友人のサダフ(ニウシャ・アフシ)を連れてきた。お洒落で自由な気質のサダフは魅力的で、サナはマニキュアを塗ってもらった。ナジメにとっては歓迎したくない客だったが、学生寮が閉鎖されたため一晩だけ泊めることに。ナジメはイマンと顔を合わさない条件で泊め、翌日、車で3人を学校へ送り届けた。

 ところが、テヘランで暴動が起こり学校は休校に。ニュースでは報道されないが、SNSでは警察が暴力をふるう動画が拡散されていた。ヒジャーブの着用が正しくないと逮捕された22歳のマフサ・アミニが死亡した事件もあり、若い女性たちも抗議デモをしていた。レズワンとサナはサダフが暴動に巻き込まれていないか心配する。

 そんな中、レズワンが顔に大怪我をしたサダフを家に連れてくる。病院へは連れて行けないので、ナジメが応急手当をして彼女を家へ送り届けた。レズワンとサナはひどいショックを受けていた。一方、イマンは毎日200件や300件の起訴状を処理しなければならず、焦燥していた。1件に2、3分しかかけられず、多くの逮捕者が処刑されていく…。

 そんなある日、イマンはベッド脇の引き出しに入れていた護身用の銃がなくなっていることに気づく。侵入者ではなさそうだ。ならば、家族の誰が?一体、なぜ…?

アジコのおすすめポイント:

若者たちが蜂起し始めたイランの状況を、ある家族を通じて描いた社会派ドラマです。自身も投獄経験のあるモハマド・ラスロフ監督がそこで見聞きし、体験したことを、決意を持って映画にし、世界に訴えた渾身作。昨年のカンヌ映画祭でプレミア上映され、12分間に及ぶスタンディングオペーションで賞賛されています。監督はイランを脱出し、28日間をかけてカンヌに到着。審査員特別賞を受賞しました。そして、2025年の米アカデミー賞国際長編映画賞には、ドイツ作品としてノミネートされています。2月28日公開予定の『TATAMI』もそうですが、世界では信じられないようなことが起こっており、スクリーンを食い入るように見つめてしまいます。本作に挿入されているスマホで撮られた暴動シーンは、実際にSNSでアップされた動画のようですが、はて?同じような光景を見たことがある。光州事件を描いた一連の韓国映画。そして、香港での大規模デモ…。昇進したのに、こんなはずじゃなかったと悩む父親。そして、後半は失われた銃をめぐる家族間の対立へ。俳優も撮影スタッフも厳選され、逮捕される恐怖と背中合わせの撮影だったそうですが、若い世代や女性たちへの可能性を感じた監督のメッセージをしっかりと伝えています。故郷のイチジクの種に若者たちの可能性を感じた監督の願いがかないますように。

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