エブリシング・エブリウェア・
オール・アット・ワンス
(Everything Everywhere All At Once)
story
伝票整理で忙しい工ヴリン(ミシェル・ヨ ー)はイライラしていた。家族経営のコインランドリーに監査が入り、国税庁に行かなければならないのだ。店の客からは目が離せないし、夜には父親ゴンゴン(ジェームズ・ホン)の誕生会と春節のお祝いを兼ねたパーティもある。夫のウェイモンド(キー・ホイ・クァン)は優しいけど優柔不断で、頼りにならなかった。
そこへ、娘のジョイ(ステファニー・スー)が帰ってきた。税金の専門用語がわからない工ヴリンのために、国税局で通訳をしてもらうのだ。ところが、ジョイは恋人のベッキ一(タリー・メデル)をゴンゴンの世話係として連れてきていた。自分はまだしも、保守的な父親に同性愛は理解できない。エヴリンがベッキ一をジョイの「いいお友達」と紹介したため、ジョイはブチギレて帰ってしまう。
やむなく、エヴリンはゴンゴンを連れウェイモンドと3人で国税庁を訪れる。ところが、エレベーターの中でウェイモンドが豹変。不思議なイヤホンをエヴリンに装着させメンタルスキャンを行うと、紙の裏に用具室へ行くための指示を書いて渡した。そして、エレベーターのドアが開くと、いつものウェイモンドに戻っていた。
ディアドラ(ジェイミー・リー・カーティス)は優秀な監査官だった。伝票を前にとことん絞られる工ヴリン。ウェイモンドが言い訳をしている間、エヴリンは指示書を盗み見て実行する。すると、いつの間にか気が遠くなり、用具室にワープ! そこには、アルファ・バースという別の宇宙から来たアルファ・ウェイモンドがいた。
エヴリンはアルファ・ウェイモンドから驚愕の依頼を受ける。全宇宙にカオスをもたらそうとしている強大な悪ジョブ・トゥパキを倒し、世界にバランスを取り戻せるのはエヴリンだけだと言うのだ。そして、アルファ・バースにいた学者のエヴリンが生み出したバース・ジャンプにより、異次元にいる自分とリンクすれば異次元の自分が持つ力を獲得できるらしい。だが、バース・ジャンプを起動するには、最強の変な行動が必要だった。
突然の使命に混乱するエヴリン。そこへ、悪の手先に乗っ取られたディアドラが襲いかかる!エヴリンが最初にバース・ジャンプしたのは、カンフーの達人となったエヴリンのいる世界だった。彼女はウェイモンドとは結婚せず、カンフーの師匠(西脇美智子)と出会って特訓を受け、今やアクションスターとして華々しい日々を送っていた。
我に返ったエヴリンにはカンフーの技術が身についていた。闘いの場と化した国税局。しかし、ジョブ・トゥパキに察知され、彼女がついにやって来た。現れたのはなんと、変貌したジョイだった。果たして、ジョイは何者かに乗っ取られているのか…?
アジコのおすすめポイント:
香港映画ファン、アクション映画ファンにはお馴染みの、我らがミシェル・ヨー姐さんのこれまでにない多彩な顔、演技、魅力が詰まった作品です。「もっと前にこの作品に出演していたら、キャリアが変わったかも」と本人も語っているほど。一口でこんな映画、と説明するのが難しいのですが、終わってみれば、家族愛や隣人愛、周りの人々に親切に接することで世界は生きやすく幸せになる、というメッセージが伝わってきます。とは言うものの、1度観ただけで世界感や展開を把握するのは難しいかも。本作も何度かご覧になることをお勧めします。
監督は『スイス・アーミー・マン』(16年) で注目された通称「ダニエルズ」と呼ばれるダニエル・クワン&ダニエル・シャイナートのコンビ。現代を生きる不安を感じたのをきっかけに企画を考え、インターネット社会をマルチバースにたとえてカオス(混沌)や虚無に飲み込まれそうな危機感を描いています。当初は父親を主人公にジャッキー・チェンを起用しようとしたものの叶わず「主人公を母親にしたら脚本に命が宿った」と監督。ミシェル・ヨーが引き受けたことで、この奇想天外な物語が実現したのでした。
重要な鍵を握る夫役を演じたのは、あの『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』でデビューした名子役キー・ホイ・クァン。見事な俳優復帰を果たし注目を浴びています。彼もまた、ミシェル同様に様々な多元世界でいろんなキャラクターに扮し、様々な魅力を披露してくれます。ラスボス的存在の娘を演じたステファニー・スーは、渡辺直美のような迫力で存在感あり。コミカルな香港スタイルのカンフーアクションを取り入れ、『2001年宇宙の旅』『花様年華』『レミーのおいしいレストラン』などの引用、指がソーセージに進化した世界や、石の世界まで登場します。アメリカ的な下ネタジョークは文化の違いと大目に見て、遊び心満載の哲学的作品としてお楽しみください。
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