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七人樂隊

七人樂隊(七人樂隊/Septet:The Story of Hong Kong)


プロデューサー:ジョニー・トー、エレイン・チュー
監督:サモ・ハン、アン・ホイ、パトリック・タム
   ユエン・ウーピン、ジョニー・トー、リンゴ・ラム(遺作)
   ツイ・ハーク
撮影:チェン・チエンリー、プーン・ハンサン(H.K.S.C.)
   タム・ワイカイ(H.K.S.C.)
アクション監督:サモ・ハン、ジミー・ハン、ユエン・ウーピン
音響:トゥ・ドゥーチ
出演:ティミー・ハン、フランシス・ン、ジェニファー・ユー、ユン・ワー、ン・ウィンシー、サイモン・ヤム、チョン・タッミン、ラム・シュー

2021年/香港
日本公開日:2022年10月14日
カラー/ビスタ/5.1ch/111分
字幕:鈴木真理子
配給:武蔵野エンタテインメント
©2021 Media Asia Film Production Limited
2020年 カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション
2020年 釜山国際映画祭オープニング作品
2020年 東京フィルメックス 観客賞
2021年 香港国際映画祭オープニング作品


#01 稽古(練功/Exercise)

監督・脚本:サモ・ハン 脚本:アウ・キンイー
編集:ジミー・ハン 出演:ティミー・ハン

 1950年代。建物の屋上で、戯劇学校に入門した大勢の少年少女がカンフーの稽古に励んでいる。しかし、師匠(ティミー・ハン)の厳しい指導に耐えかねた彼らは、師匠が部屋で休んでいる間、逆立ちの稽古をさぼっていた。ところがある日、見張り役の少女が居眠りをして、師匠に見つかってしまう。兄弟子のサモは大目玉をくらい、椅子の上で逆立ちを命じられるが怪我をしてしまい…。

■後にカンフーやアクション映画で活躍する「七小福」の一人だったサモ・ハンが、頭の古傷にちなんだ少年時代の師匠との思い出を描いた作品。長男のティミー・ハンが師匠を演じ、次男のジミー・ハンもアクション指導や編集で参加している。狭い香港の街ならではの練習風景で、やんちゃな子どもたちがユーモラスで楽しい。


p2

#02 校長先生(校長/headmaster)

監督:アン・ホイ 脚本:ロウ・シウワー 編集:マリー・ステファン
出演:フランシス・ン、サイア・マー

 1960年代。教育に人生を捧げた校長先生(フランシス・ン)の小学校には、彼を敬愛する英語のウォン先生(サイア・マ)がいた。2001年、校長先生の誕生日を祝う同窓会が開かれるが、ウォン先生は病気で未婚のまま他界していた。その思いは…。

■アン・ホイ監督が長編映画にしたかった企画を短編にまとめた作品。60年代の香港の小学校が描かれ、フランシス・ンが好演。

p3

#03 別れの夜(別夜/Tender in the Night)

監督・脚本・編集:パトリック・タム 脚本:メルヴィン・ロク
出演:ジェニファー・ユー、イアン・ゴウ

 1980年代。高校生のガンフェイ(ジェニファー・ユー)は家族でイギリスへ移住が決まり、BFのカーラム(イアン・ゴウ)と最後の夜を一緒に過ごそうとするが、カーラムの思いは複雑だった。すれ違う会話の中で、二人は次第に感情を高ぶらせ…。

■当時、起こったであろう若い恋人たちの別れを、香港ニューウェーブの旗手パトリック・タム監督が象徴的に描いた作品。

p4

#04 回帰(回歸/Homecoming)

監督・脚本:ユエン・ウーピン 編集:アレン・リョン(H.K.S.E.)
出演:ユン・ワー、アシュリー・ラム

 1997年。香港の中国への返還を前に、家族でカナダへ移民する孫娘のチュー(アシュリー・ラム)が受験のため、カンフー達人の祖父(ユン・ワー)と暮らすことに。英語とカンフーを教え合い楽しい時間を過ごす。そして、3年後が過ぎ…。

■返還前後の出来事を、カンフー達人のユエン・ウーピン監督がユン・ワー主演でユーモラスに描く。ラストの展開も嬉しい。

p5

#05 ぼろ儲け(遍地黄金/Bonanza)

監督・脚本:ジョニー・トー 脚本:ヤウ・ナイホイ
編集:デヴィッド・リチャードソン(H.K.S.E.)
出演:ン・ウィンシー、トニー・ウー、エリック・ツイ

 2000年。茶餐廳で若い男女3人(ン・ウィンシー、トニー・ウー、エリック・ツィ)が投資話の相談中。2003年はSARS不安で決断できず。2007年、市場回復を見込んだ3人はついに…。

■香港ならではの茶餐廳(ティーレストラン)を舞台に、金儲けの相談で集まる男女3人の変遷を描いたジョニー・トーらしい作品。

p6

#06 道に迷う(迷路/Astray)

監督・脚本:リンゴ・ラム(遺作) 編集:ジェフ・チョン
出演:サイモン・ヤム、ミミ・コン、ロイス・ラム、チュン・キンファイ

 2018年。旧正月を香港で過ごすため、移民先から里帰りした中年男(サイモン・ヤム)。街の風景はすっかり変わり、妻子との待ち合わせ場所にたどり着けない。一人で懐かしい場所を巡りながら、スマホに届いた地図を頼りに、やっと妻と息子を見つけるのだが…。

■移民した人々の里帰りに香港人の心情やノスタルジーを絡ませる。ラストは衝撃的で象徴的。リンゴ・ラム監督の遺作となった。

p7

#07 深い会話(深度對話/Conversation in Depth)

監督・脚本・編集:ツイ・ハーク 脚本:ロイ・シートウ
出演:チョン・タッミン、チョン・カムチン、ラム・シュー、ローレンス・ラウ

 近未来。精神病院の白い部屋で、医師(チョン・カムチン)と患者(チョン・タッミン)が対峙中。質問と答えがかみ合わず混迷していく。その様子を、隣の部屋で二人の医師(ローレンス・ラウ、ラム・シュー)が観察中。果たして、本物の医者は誰…?

■奇妙なかみ合わない会話が続く未来。さて、これは一体?という未来を描いたのはツイ・ハーク監督。なかなかに深い。

アジコのおすすめポイント:

ジョニー・トー監督の発案で、香港映画界の名匠たちが集結。1950年代から未来までを10年ごとに区切り、くじ引きで割り当てられた時代を、それぞれの監督たちが自身のテイストで描いた短編集です。共通テーマはフィルム撮影で香港を描くこと。デジタル撮影が主流になった今、フィルム時代の全盛期を生きた監督たちがフィルムに敬愛を込め、過ぎ去った香港の時代を描くことで、映画や香港への深い愛情を焼き付けた作品となっています。1970年代はジョン・ウー監督が描く予定でしたが、体調不良で叶わず。どんな作品になっていただろうかと、残念です。また、これが遺作となってしまったリンゴ・ラム監督の作品は感動的。過ぎ去ったもの、失われたもの…香港への様々な思いがよぎります。一番難しかったのは、未来パートのツイ・ハーク監督だったのでは? これ、一見ジョークに見えて、実は深い状況が読み取れる。そういうタイトルなんじゃないでしょうか。ベテラン監督たちが、それぞれの立場できっちり香港の過去・現在・未来を描いているのです。

ジョニー・トー監督

*トレードマークの眼鏡をかけていないジョニー・トー監督からのメッセージ映像

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