空気殺人〜TOXIC〜(空気殺人/TOXIC)
story
大学病院に勤務する医師チョン・テフン(キム・サンギョン)は、妻ギルジュ(ソ・ヨンヒ)、息子ミヌ(キム・ハオン)と幸せに暮らしていた。ところが、ミヌが水泳の授業中に失神。病院に運びこまれ、急性間質性肺炎と診断される。重体で意識が戻らず、原因もわからない。テフンとギルジュはショックを受ける。テフンは病院に残り、ギルジュは入院支度でいったん家に戻った。
翌日、ギルジュの妹でやり手の検事として活躍しているヨンジュ(イ・ソンビン)が何も知らずにやって来て、ギルジュが倒れているのを発見。ギルジュはそのまま救急車で病院へ運ばれるが、すでに亡くなっていた。ミヌと同じ肺疾患だった。葬儀が行われるが、不審に思ったテフンは意を決して妻の検死を行う。原因は感染症ではなく、気管支の炎症が元で肺がダメージを受けていた。
テフンは、似たような症例を最初に発見したオ・ジョンハク教授(ナム・ミョンニョル)を訪ねる。2006年から急性肺疾患が増え始め、その80%が春に発生していた。テフンは患者リストを元にアンケートを送るが、反応が鈍いため訪問に切り替える。結果、加湿器が浮上する。PHMGという有害な化学物質がタンクから検出されたのだ。それは、殺菌剤に含まれていた。
マウス実験も行い、製造販売しているオーツー社へ販売禁止を求めるが、社長のチョ代表(チャン・ヒョクチン)は腹心のソ・ウシク(ユン・ギョンホ)を呼び寄せ、実験結果の隠蔽工作を指示する。パク議員(チャン・グァン)の力も借りてマスコミや検察に圧力をかけた。ヨンジュも検察から追い出されてしまう。
しかし、ヨンジュは弁護士事務所を立ち上げ、テフンや被害者家族と民事訴訟を起こす。なかなか裁判に持ち込めないなか、韓国在住のアメリカ人に被害が発生。アメリカでの訴訟を避けたいオーツー社は裁判に応じた。そして、金の力で、ヨンジュが頼りにしていた元地検長のチョン・ギョンファン(ソン・ヨンギュ)に弁護を依頼する…。
アジコのおすすめポイント:
韓国からまたまた、社会派の硬派告発映画の登場です。本作の英語タイトル「TOXIC」とは「毒」という意味。加湿器の殺菌剤に含まれていた成分が毒となり、いつの間にか利用者の身体を蝕んでいたという恐ろしいお話。「加湿器殺菌剤事件」という実話が元になっており、今も係争中だそうです。この問題に関心を持ったチョ・ヨンソン監督は、原作よりももっと踏み込み、原作では描ききれなかった部分も取り上げたとのこと。主演は刑事ものや社会派作品にも多く出演しているキム・サンギョン。共に闘う義妹役をイ・ソンビン、そして重要な人物をユン・ギョンホが見事に演じています。終盤、主人公が法廷で爆発させる怒りの声は、被害者たちの心の叫びとなって迫ります。被害者の数はなんと約2万人(死亡者だけで)。韓国では本作の上映が世論を動かし、加害企業に対する動きが高まっているそうです。
監督からのメッセージ:
「この出来事を「記憶」してください。皆様の「記憶」が集まらなければ奇跡は起こせません。この映画はただ一件の加湿器殺菌剤の話を描いているわけではなく、人による災害を描いた映画なんです。日本の水俣病のように、世界各地で起きた、またはこれから起こり得る人災なんです。ですから本作品をきっかけに、そういった事件に関してみんなに「関心」を持っていただきい!というのが私の願いです」
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