義足のボクサー GENSAN PUNCH (GENSAN PUNCH)
story
沖縄。津山尚生(ナオ/尚玄)はボクシングジムで懸命にトレーニングを積んでいる。幼い頃の事故で右脚を失い、膝から下は義足を付けているものの、健常者に負けないほど鍛えていた。だが、何度申請しても、日本ボクシング委員会からはプロボクシングのライセンスがもらえなかった。前例がなく、安全性が理由だった。海外なら可能性があるかもしれないが…。
沖縄そばの店「津山商店」を営む母(南果歩)と妹(木佐貫まや)は、ナオを理解し応援していた。テレビでジェンサンシティ出身のマニー・パッキャオの活躍を見たナオは、迷わずフィリピンのジェネラル・サントス(通称ジェンサン)へ飛ぶ。迎えてくれたのは、ボクシングジム「ジェンサン・パンチ」のベン(ジュン・ナイラ)と、マニラからやってきた22歳のボン・ジョヴィ(ヴィンス・リロン)だ。
ジェンサンはマグロで有名な港町。ボン・ジョヴィが運転するオート三輪で魚市場へ向かうと、コーチのルディ(ロニー・ラザロ)が喧嘩している。ベンが仲裁に入り、ナオを紹介。ジェンサン・パンチにはたくさんのトロフィーが並んでいた。ベンは妻のミナ(エヴァンジェリン・トルキノ)と娘のメリッサ(ビューティー・ゴンザレス)を紹介。仲間たちの中には日本人のタク(金子拓平)もいた。翌日からルディの元でトレーニングが始まる。
ナオの目的はプロのライセンスを取得すること。それには、健康診断書とトレーニング記録、そしてアマチュア試合で3連勝してメディカルチェックを受けることが条件だ。条件の2つはすぐにクリア。ナオは試合で1勝し、2戦目はボン・ジョヴィからお守りをもらって挑み、テクニカルノックアウトで勝利した。だが、ボン・ジョヴィはその後の試合で命を落としてしまう。
そして、ライセンスがかかった3戦目。ルディは勝利を確実にするため、対戦相手にお金を渡して八百長を仕組もうとするのだが…。
アジコのおすすめポイント:
義足のため、日本ではプロボクサーとしてのライセンス資格が取れず、ボクシングの盛んなフィリピンへ渡ってプロボクサーになった青年の実話を映画化した作品です。モデルとなったのは沖縄の土屋直純さん。同じく沖縄出身の俳優、尚玄がこの話に感動。8年前から映画化を考えはじめ、映画祭を通じて知りあったフィリピン映画界の巨匠ブリランテ・メンドーサ監督に尚玄自ら企画を持ち込んだところ、なんと快諾。尚玄を主演に、初の日本との合作で初のスポーツ映画に挑んだのでした。
尚玄さんといえば、昔からアジア映画でときどきお見かけしており、密かに応援していたので、今回の主演はうれしかったのですが、ご自身はルックスにコンプレックスがあった模様。たしかにモデルさんとしては洋風のイケメンで素敵なのですが、俳優となるとお顔が濃すぎて日本映画では浮いてしまいそう。「日本じゃ役がないよ」と言われて反発。それなら、海外で!と思う自分と土山さんが重なり、自分自身の感情も投影されているそうです。
さて、本作。メンドーサ監督といえば、『ローサは密告された』など底辺社会の闇をドキュメンタリータッチで描く社会派の監督。本作でも、家族のためにボクシングで一旗揚げたいと願う若者たちが描かれています。脚本が当日の朝までなく、カメラもずっと回っているので、役者さんもずっと役に入ったままだったとか。この辺の詳細は、昨年の東京国際映画祭でのQ&Aやトークサロンをご覧ください。先行上映された沖縄でのインタビューもあります。諦めなければ夢は叶う。日本でだめなら世界がある。夢は無限大なのだと、生き方のエールをもらえる作品です。
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