ブルー・バイユー(Blue Bayou)
story
韓国で生まれ、3歳で養子としてアメリカに来たアントニオ(ジャスティン・チョン)は、シングルマザーのキャシー(アリシア・ヴィキャンデル)と結婚し、7歳の娘ジェシー(シドニー・コウォルスケ)と貧しいながらも幸せに暮らしていた。キャシーが妊娠し、タトゥーアーティストだけでは収入が足りず職を探すが、アジア系であることやバイク窃盗の前科が邪魔して上手くいかない。
赤ちゃんが産まれたら、実の父親の様にアントニオも自分を捨てるのではないか? ジェシーに言われたアントニオは、ジェシーに愛を伝え、学校をサボらせて1日一緒に過ごした。ところが、結婚もせず二人を捨てた警官のエース(マーク・オブライエン)は、娘に会わせろとしつこく電話してくる。アントニオには実の父親であるエースの気持ちもわかるが、ジェシー本人が嫌がっていた。
スーパーで買い物中、アントニオとキャシーがたまたま口論しているところへ、巡回中のエースと相棒のデニー(エモリー・コーエン)が介入。アントニオは暴行を受け、逮捕されてしまう。キャシーが保釈金を払って留置所に迎えに行くと、アントニオはすでにICE(移民関税執行局)へ引き渡されていた。なんと国外追放命令を受けていたのだ。
二人は弁護士(ヴォンディ・カーティス=ホール)に相談に行き、30年以上前の養父母の手続きの不備でアントニオには市民権がなかったことを初めて知る。海外からの養子に市民権を与える法案は2000年に可決されたが、アントニオがアメリカにやって来たのは1988年。さらに前科のあるアントニオには強制送還の可能性もあり、たとえ結婚していても永住権がなければアメリカで暮らすことはできない。
出国して海外から在留資格を取るか、留まって控訴するか、選択肢は2つだけ。負けたら2度とアメリカには戻れない。弁護士からは裁判費用の手付金として、5000ドルを提示され途方に暮れてしまう。街へ出てタトゥーの客探しをするアントニオ。病院で知り合った親切な女性パーカー(リン・ダン・ファン)が通りかかり、ユリの紋章を彫って欲しいと申し出る。彼女はベトナム系移民で癌を患っており、余命宣告を受けていた。
家族との時間を大切にしたいアントニオ。パーカーの自宅に招待され、家族3人でベトナム系コミュニティのパーティにも参加。キャシーは歌を歌い、初めてアジアの文化に触れたアントニオは、幼い頃の母親の記憶を思い出す。愛する家族と離れたくないアントニオ。彼は裁判費用のため、ある決心をする…。
アジコのおすすめポイント:
3歳の頃、韓国からアメリカへ養子縁組で渡り、幸せな家庭を築いた青年が、市民権を持っていなかったことから国外追放命令を受けるという悲劇を真正面から描いたヒューマンドラマです。監督&脚本は『トワイライト〜初恋〜』(08)で注目され、アンドリュー・ラウ監督が中華系移民のマフィア世界を描いた『リベンジ・オブ・ザ・グリーン・ドラゴン』(14)にも出演している俳優のジャスティン・チョン。韓国にルーツを持つ彼自身はアメリカ人として幸せに育っていますが、周りには養子縁組でやってきた韓国系移民たちがかなりいたそう。国外退去処分の記事を読んだのがきっかけで本作に取り組み、美しいバイユー地域(ミシシッピ川の支流や入江のある地帯)のあるニューオーリンズを舞台に、南部特有の黒人やアジア系移民に対するヘイトや差別、移民問題を描き、ベトナム文化を通じて主人公がアジアに初めて目を向けるというアイデンティティーの問題も描いています。
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