ムーンライト・シャドウ(Moonlight Shadow)
story
さつき(小松菜奈)の頭から鈴の音が離れなかった。その音には、等(宮沢氷魚)と出会ってからの二人のすべてがあるからだ。
さつきが河原の茂みで迷子になった猫を探している時、初めて等と出会った。さつきが身につけていた鈴がきっかけで、二人はすぐに恋に落ち、付き合うようになる。二人でボートに乗り、さつきはその鈴をお守り代わりに等の手首に付けてあげた。
ある日、さつきは等の弟で17歳の柊(佐藤緋美)に紹介される。柊が食事を作ってごちそうしたいと申し出たのだ。柊は初対面の人に必ず食事を作り、食べ方で相手を見定めていた。その日は柊の恋人・ゆみこ(中原ナナ)も来ていた。
美味しいロールキャベツ。ドミノ倒しの仕掛けつくり。楽しい時間が流れる。ゆみこはネットで見つけた「月影現象」に興味を持っていた。満月の夜の特別な時間に、もう会えなくなった会いたい人に会えるという。「もし、それがほんとうだったら、誰に会いたい?」
さつきの友人が留学することになり、部屋を譲ってくれるという。二人が大好きな橋に近く、一緒に住むのに十分な広さだ。その頃に、突然、事故が起こる。等がゆみこを車で送った日、二人とも事故で亡くなったのだ。
アジコのおすすめポイント:
愛する人との突然の別れをどうやって乗り越えていくか。ベストセラー作家・吉本ばななが喪失と再生を描いた初の短編小説「ムーンライト・シャドウ」(88年刊の『キッチン』に収録)を、マレーシア出身のエドモンド・ヨウ監督が映画化しました。日本で映画を学んでいた頃に原作を読み、自身もファンだったという監督。原作に監督ならではの様々なイメージを膨らませて、日本人が描くのとは一味違う視点や角度から繊細に描かれた新しい日本映画となっています。特に印象に残るのは、主人公たちが出会い、別れる大きな川と長い橋。水の流れやせせらぎの音。水の循環と魂の循環が重ね合わされ、幻想的です。演じるのはフレッシュで存在感のある若手俳優たち。小松菜奈、宮沢氷魚と旬な俳優たちが揃い、ミステリアスな案内人を演じた臼田あさ美も光っています。突然の別れが身近になってしまった今だからこそ、しっかり食べてしっかり生きようと思わせてくれます。
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