返校 言葉が消えた日(返校/Detention)
story
1962年、戒厳令下の台湾。翠華高校では、国民党のバイ教官(チュウ・ホンジャン)が常駐し、反乱分子が潜んでいないか常に目を光らせていた。しかし、一部の生徒たちは密かに行われている読書会に参加。海外の様々な小説や思想家たちの本を読んで楽しみ、自由の大切さを学んでいた。
誰もいない教室の中。机の上でまどろんでいたファン・レイシン(ワン・ジン)が目を覚ます。外は雨で薄暗く、人気がなかった。ロウソクを手に廊下に出てみると、チャン先生(フー・モンボー)の姿を見かけ、追いかけるが見失う。
同じ頃、やはり教室で目覚めたウェイ・ジョンティン(ツォン・ジンファ)も校内を彷徨っていた。レイシンと出会い、二人で校庭へ出ると小さな墓が建っていた。不吉な予感がして校門へ向かう。だが、その先は道路が陥没して濁流が流れ、先へ進むことができなくなっていた。
学校へ引き返すと、校長室で電話のベルが鳴った。受話器からは「ここを出ろ」とかすかな声が聞こえる。その声は、チャン先生に似ていた。職員室は封鎖され、ドアの横に「国家の転覆をはかる地下組織が見つかった」という貼り紙があった。そして、チャン先生とイン先生(チョイ・シーワン)の机が荒らされていた。
秘密の読書会を始めたのはチャン先生だった。イン先生も賛同して協力していた。レイシンはジョンティンが読書会のメンバーだと気づいていた。そしてチャン先生は、レイシンにとって憧れ以上の存在だった。両親の不和に悩む彼女に、映画や音楽の素晴らしさを教えてくれ、いつも優しく接してくれたのだ。そして、プレゼントも…。
二人は読書会が開かれていた備品室へ行ってみる。だが、室内は荒らされ、誰もいなかった。「みんな捕まったんだ」ジョンティンは絶望するが、レイシンは「どこかに隠れているのかも」と望みをつなげる。不穏な空気の中、勇気を振り絞って校内を探索する二人に、次々と悪夢のような恐ろしい出来事が襲いかかる…。
アジコのおすすめポイント:
国民に相互監視と密告が強制された「白色テロ時代」の台湾を舞台に、とある高校で起こった迫害事件と悲しい恋の顛末を描いたダークミステリーです。元となっているのは、大ヒットしたホラー脱出ゲーム「返校 -Detention-」。そのストーリー性に感動したジョン・スー監督が、ゲームの精神とテイストを損なうことなく映像化し、初の長編映画デビュー作として完成させました。ホラー作品は苦手なアジコですが、金馬奨で5冠に輝いた作品でもあり、これは観なくては!と覚悟して試写会に。怖そうなところは目をそらしながら見たのですが、終わってみれば感動の涙が。そのくらい、今の自分たちの世界へ通じる大切なメッセージが込められていました。映画化されたのも納得です。そして、こんなゲームを作ってしまう台湾ってすごいなあと。ゲーム版に興味のある方は任天堂からダウンロード版が出ているので、トライしてみてください。監督は映画の中にイースターエッグを隠しているそうです。さて、主人公の二人、学校に閉じ込められ、居残り(detention)状態の二人を演じるのは、ワン・ジンとツォン・ジンファです。14歳にして初の小説を出版したワン・ジンは、大人びた孤独な美少女にぴったり。そんな彼女に憧れる後輩役のツォン・ジンファは万単位のオーディションで選ばれた期待の新星。本作で映画デビューを飾りました。二人はなぜ、学校に閉じ込められてしまったのか? ぜひ、劇場でお確かめください。
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