王の願い ハングルの始まり
(ナランマルサミ/The King's Letters)
story
1442年、朝鮮の第4代国王・世宗(ソン・ガンホ)は雨乞いの儀式を行いながら苛立っていた。読み上げられる言葉は難しい漢文ばかり。朝鮮には朝鮮人の言葉を書き記す文字がない。「庶民が学びやすい文字を創りたい」その思いは、揺るぎない決意に変わっていった。
その頃、倭国の僧侶たちが仏教の聖典「八幡大蔵経」の原本を求めてやって来る。儒教国である朝鮮には不要と先代が約束したものだが、国宝を譲っては庶民に浸透している仏教徒の反感を買ってしまう。仏教徒である王妃(チョン・ミソン)は海印寺からシンミ(パク・ヘイル)を呼び寄せる。彼はサンスクリット語で説法し、事を収めた。
感心した世宗はシンミたち一行を招き、サンスクリット語の経文を歌のように諳んじたハクチョ(タン・ジュンサン)と、それを文字に書き記すハギョル(イム・ソンジェ)を見て興味を示す。これは、表音文字の原理だ。世宗は民のための文字創りに力を貸して欲しいとシンミに頼み、シンミは王宮の中に寺を作ることを条件に承諾する。
それから、秘密裏に文字創りが始まった。世宗は息子のスヤン(チャ・レヒョン)とアンピョン(ユン・ジョンイル)を寺へ送り込み、サンスクリットやパスパなどの文字を覚えさせた。僧侶たちには宦官の服が与えられ、王妃付きの女官たちが彼らの世話をした。音の分類や音集めが始まり、基本の文字数は極力少なくし、点と直線だけで文字を表す試行錯誤が続けられた。
しかし、漢字を権力の象徴とみなす臣下たちは王の変化に気づき、儒教国の王が仏教に傾倒することにも危機感を抱いていた。
アジコのおすすめポイント:
名君であった朝鮮4代目国王・世宗(セジョン)が晩年、民のためにハングルを生み出すまでの苦労談を当時の実在人物に絡め、想像を膨らませて描いた歴史ドラマです。あの不思議な文字ハングルが、円と直線のみで作られている理由もわかります。数学の知識もある王の発案だったんですね。(天文学にも詳しかったエピソードは『世宗大王 星を追う者たち』をどうぞ)音を集めて文字にしていく過程も興味深く、様々な苦労があったものと思われます。そうして、できあがったのが「訓民正音」。儒教と仏教の対立、仏教徒で逆賊の娘であった年上の王妃との夫婦愛も描かれます。監督は『王の運命 ー歴史を変えた八日間ー』の脚本で知られるチョ・チョルヒョン。本作の脚本も担当し、監督デビューを飾っています。主演は名優ソン・ガンホ。王に協力する僧をパク・ヘイル。そして、夫を支え励ます王妃を本作が遺作となったチョン・ミソンが堂々と演じています。また、海辺寺や浮石寺など、多数の文化遺産が登場するのも見所です。
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