トゥルーノース(True North)
story
国際的映画祭の受賞式典会場。その青年監督は、受賞の喜びと共に過去を振り返る。自分を信じ助けてくれた友との思い出や真実を伝えることが、自分の使命なのだと誓って。
金正日体制下の北朝鮮。幼いヨハンとミヒの家族は、1950年代から1984年まで続いた在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮に渡った。暮らしぶりはまずまずで、たまに日本の親戚から小包も届く。だが、家族は常に見張られていた。そしてある日、父親が会合に出かけたまま帰らなくなる。
気丈で明るい母親ユリの励ましで父の帰りを待つが、夜中に警察たちが押しかけ、部屋中を捜査された挙句、母と兄妹も寝巻きのままトラックに乗せられた。向かった先は極寒の強制収容所。父親が政治犯として逮捕され、連座制で家族も連行されたのだった。
それからの生活は一変。家族単位で土間のような粗末な家をあてがわれ、大人も子どもも過酷な強制労働を強いられた。自分を守るために密告をする者もいて、逃亡をはかったり、妊娠した女性たちは公開処刑される。ユリは母親を処刑された少年インスを受け入れ、一緒に暮らすようになる。
時が経ち、看守のリーは美しく成長したミヒを気に入り、なにかと目をかけていた。一方、ヨハンは食糧を確保するため、乱暴者のチェ・ドンスが率いる監視グループに入り、次第に自己中心的になっていく…。
アジコのおすすめポイント:
帰還事業で北朝鮮に渡った日系人家族。父親が政治犯として捕えられ、強制収容所に入れられてしまった家族の過酷だけど力強く生きる姿を3Dアニメーションで描いた人間ドラマです。タイトルの「トゥルーノース」とは、北朝鮮の知られざる真実という意味もあるけれど、英語の慣用句「絶対的な羅針盤」という意味もあるとか。生きる上での信念・自分なりの指標を指しているようです。ゆえに、主人公は過酷な環境を揺れ動きながらも生き抜き、最後には父親の教えを体得し、重大な決断をします。物語とはいえ、在日コリアン4世の清水ハン栄治監督(世界で注目されたドキュメンタリー『happy ーしあわせを探すあなたへ』のプロデューサー)は、この初監督作品を作るにあたり、10年の歳月をかけて収容所体験者や脱北者、元看守らへのインタビューを重ね、ほぼドキュメンタリーのような作品にしあげています。そこには悲惨さだけでなく、友情やユーモア、助け合いや恋愛も描かれています。どんな環境にあっても、人間は強く生きている。そして、この現実は今も続いている、ということを知るだけでも重要な作品です。
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