海辺の彼女たち(Along The Sea)
story
真夜中。フォン(ホアン・フォン)、アン(フィン・トゥエ・アン)、ニュー(クイン・ニュー)はバッグに荷物を詰め込んで倉庫から脱出した。フェンスを乗り越え、駅まで歩き、電車に乗ってフェリー乗り場へ。フォンは具合がわるそうだ。無事に辿り着けるのだろうか? しっかり者のアンがブローカーに連絡を取っていた。
フェリーを降りて連絡すると、待ち合わせ場所にブローカーのダンが車で待っていた。3人は3ヶ月前にベトナムから技能実習生として来日。派遣先で働いていたが、1日に15時間も働かされた挙句、残業代も払ってもらえなかった。パスポートと身分証は預けたままだが、3人はダンを頼って逃げ出し、不法就労者として働くことにしたのだった。紹介料は10万円と給料の1割。新しい職場は雪国の漁場だ。
仕事は魚の仕分けとブイの洗浄。海でブイに着いた様々な付着物を削り取る作業は結構きつい。「5年も働けばお金が貯まるよ」と同僚のベトナム人男性が言った。給料が入ったら親に仕送りをしなければならない。そんな中、フォンの体調が悪化する。3人は身分証がなくても診てくれる病院を探して訪ねるが、IDカードと保険証を求められた。
フォンには心あたりがあった。妊娠しているかもしれない。来日前のことだ。アンとニューの懸念をよそに、保険証とIDカードを偽造したフォンは一人で病院へ向かう…。
アジコのおすすめポイント:
家族を助けるために、お金を稼げると信じてベトナムからやって来た3人の若い女性技能実習生に起こる出来事をドキュメンタリータッチで描いた社会派ドラマです。デビュー作『僕の帰る場所』でミャンマーからの移民家族の問題を描いた藤元明緒監督の第2弾。ミャンマーの技能実習生から貰ったSOSに応えられなかった苦い経験を、映画にして世に問うています。人が集まらない3K労働の現場にたくさんのアジアからの技能実習生が集まっているという現実。ちゃんと賃金が払われているならまだしも、実際は差別や搾取が横行し、逃げ出す人が後を絶たないようです。さらに、在日の同胞からも搾取されるなんて。シェルターも存在しますが、もっと受け入れる国としての法整備や待遇改善を祈らずにはいられません。(監督とご家族の今も心配です…)
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