緑の牢獄(緑色牢籠/Green Jail)
story
沖縄の南に位置する西表島。沖縄で二番目に大きな島であり、イリオモテヤマネコが発見されてからは、秘境の島として脚光を浴びている。しかし、明治19年から昭和20年までの60余年、この地に規模の大きな西表炭鉱があったことを知る人は少ない。
炭鉱には多くの鉱夫が集められ、日帝時代の植民地である台湾や朝鮮からも多くの人々が送られてきた。会社は村でしか使えない独自の貨幣で賃金を払い、坑夫が逃げられない仕組みを作っていた。そこでは搾取やマラリアが蔓延し、坑道に幽閉された鉱夫たちの中には脱出を試みるものもいたが、浦内川を渡りきれず多くの血が流れたという。
今は廃坑となり、無秩序な緑に覆われているその地に、90歳の老女が一人住んでいる。10歳で坑夫を斡旋する養父に連れられて台湾から日本に渡り、日本に帰化した橋間良子だ。西表は死の島と語る彼女は炭坑者と差別され、学校へも行けなかった。子どもたちは島を出て以来、音信不通だ。
アメリカ人のルイスという27歳の青年がこの家に居ついた。母親が使っていた部屋に間借りし、午後は伝統行事の練習や野良仕事に出かける。夜はいつもテレビゲームをしていて、電子音が響く。良子はタケノコの煮物を作ってやる。ルイスは炭鉱の跡地から遺留品を集めて保管していた。
アジコのおすすめポイント:
台湾や朝鮮からの坑夫が多数働いていたという西表炭鉱。その最後の生き証人である橋間良子さんの晩年4年間に寄り添ったドキュメンタリーです。沖縄で個人的な歴史に焦点を当てた作品を撮り続ける黄インイク監督が、「沖縄・八重山諸島における台湾移民」をテーマに、2013年からスタートした「狂山之海」シリーズの第二弾として完成させました。(第一弾は石垣島に住む台湾移民の家族史を映した『海の彼方』)今回はインタビューと共に、廃墟となった炭鉱や森を背景に当時の再現映像も交え、忘れられた歴史に迫っています。アメリカ人青年との交流にほっとする場面もありますが、良子さんには誰をも寄せ付けない頑なさや入っていけない沈黙の世界があり、やがて青年は去っていきます。彼女が生涯ここを離れなかったのはなぜだったのでしょうか?
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