迷子になった拳
(Documentari of the LETHWEI)
story
1000年の歴史を持つ、ミャンマーの伝統格闘技ラウェイ。禁じ手がなく判定もKOのみという、世界で最も危険な格闘技だが、最後まで立っていれば二人の勇者として讃えられる美しい格闘技でもある。
金子大輝、23歳。怪我で体操を断念した後、キックボクシングを始めるがパッとせず、自分探しのため2016年にミャンマーへ。名門のタッティ・ラウェイ・クラブに入門し、ウィンコーチの元で厳しい指導を受ける。
デビュー戦で地元の人気選手タ・ペイニョと対戦。2RでTKO負けするが、バイト先であるラーメン屋の師匠にも励まされ、2016年末の2戦目で初勝利。上り調子なった金子は日本の新団体ZONEから招聘され、体重差のあるロクク・ダリルと対戦することになる…。
一方、日本ではILFJという組織がラウェイを広めようと選手を育てていた。総合格闘技から2017年にラウェイに転向した渡慶次幸平は、デビュー戦ではミャンマーの選手に負けるが、家族の応援の中、2018年に開催された試合で初勝利。その試合には金子も日本人選手として出場していたが、自分の試合以外ではミャンマー選手団をサポートする。
そして2019年、二人の人生が向かう未来は…。
アジコのおすすめポイント:
ミャンマーの伝統格闘技ラウェイに挑んだ二人の日本人選手の姿を追ったドキュメンタリーです。一人は単身ミャンマーに乗り込み、ミャンマーで選手となった金子大輝。体操、キックボクシングを経てラウェイの中に自分を見出だそうと頑張る姿が記録されています。強さも弱さもさらけ出しているのが印象的。厳しいお母さんの存在も大きい。もう一人は結婚後に引退し、30歳までに身を立てられなければ辞めると宣言して格闘技の世界に復帰した渡慶次幸平。彼は日本のジムで鍛えられ、少しずつ力を付けていきます。彼の側にはいつも家族の応援があります。監督は原一男監督に師事した今田哲史。16年ぶりの作品だそうで、監督にとっても自身を鼓舞する作品になっているようです。二人のほか、ラウェイに関わる人々がたくさん登場しますが、皆が「ラウェイは美しい」と語り魅了されています。負けた相手にはリング上で敬意を示し、勝者はヤイダンスを踊る。人間ドラマだけでなくラウェイの魅力も味わえる作品です。さて、ここからはネタバレになりますが、映画をご覧になった方には気になるであろう二人の今と今後。金子大輝選手はなんと、K1に転向。まだ勝利はありませんが、先頃、南雲大輝に改名し、3/28に日本武道館でミャンマーのゴンナパー選手とノンタイトル戦に出場しています。一方、のぼり調子の渡慶次幸平選手は一番いい時期で辞めたいと宣言。今年のキックボクシングの試合後に引退し、社会貢献活動に専念するようです。そしてミャンマーです。撮影当時はまさかこんな事態になるとは思ってもいなかったと思いますが、皆が笑顔でラウェイを楽しめる日々が戻ることを祈ってやみません。
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