凱里ブルース(路邊野餐/Kaili Blues)
story
チェン・シェン(チェン・ヨンゾン)は出所後、亡くなった母の遺言に従い、貴州に残された実家を診療所にした。貧しい人々に簡単な診療を施す病院で、老女の医者(チャオ・ダーチン)の助手として働き、自身は古いトンネルを寝ぐらにしている。かつて野人が出ると噂されていたトンネル。長い間、探している甥っこは野人に食べられたのだという者もいた。
チェンは若い頃、弟で博打打ちのクレイジーフェイス(シェ・リーシュン)の息子ウェイウェイ(ルオ・フェイヤン)の面倒をみていた。留守がちな弟のいない時に家を訪れて遊び相手になり、ウェイウェイも彼によくなついていた。だが、それが気に入らない弟は、チェンと息子を遠ざけるため引越しをしてしまう。それ以来、ウェイウェイには会っていない。
ある夜、母の墓参りで休暇をとったチェンに、老医者がかつて愛人と交換する約束でいた品物を届けて欲しいと頼まれる。写真の男は苗族らしい。故郷の凱里には苗族も多く暮らしている。投獄されていた9年の間に、母も妻も亡くなっていた。ウェイウェイはどこにいるのだろう? チェンはバイクに乗って旅に出る。
苗族を訪ねる道すがら、様々な人々に出会う。バイクで客を送迎している青年たち。バンドの若者たち。若い女性。チェンを乗せてくれた青年はウェイウェイ(ユー・シーシュエ)という名前だった。ヤンヤン(ルナ・クォック)という女性が、この先の河を渡るとダンマイへ行けるという。町で妻に似た女性に歌を唄い、楽しいひとときを過ごしたチェンは、河を渡る…。
アジコのおすすめポイント:
日本では長編2作目の『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』が先に公開された中国映画界の新星ビー・ガン監督が弱冠26歳で完成させた長編デビュー作です。詩人でもある監督が、叔父のチェン・ヨンゾンを主人公に描く旅はまさに散文の世界。帰郷と母親の墓参り、弟との確執、可愛がっていた甥の捜索、亡き妻への思いなどが、時空を超えて現れ、夢のように描かれるところは2作目にもつながっています。とりとめがないようでありながら、主人公の心象風景をなぞる手法は、美しく印象的な映像を重ねることで飽きさせません。謎解きを楽しむように、何度でも観たくなる作品です。
当初は4月の公開予定でしたが、予想もしなかったコロナ禍の影響でオンライン上映が先行し、6月6日より晴れてシアターイメージフォーラムでの上映がスタート。そして、10月1日からはNetflixにて『ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ』と共に先行独占配信もスタート。3D ブルーレイディスクを含む特典映像満載のコレクターボックスも準備中とのこと。そちらもお楽しみに!
|