SANJU/サンジュ(Sanju)
story
ボリウッドのスター俳優サンジャイ・ダットことサンジュ(ランビール・カプール)は50代半ばにして、伝記を出版することにする。1993年にボンベイで起こった爆弾テロ事件との関係と銃の不法所持でずっと裁判が続いており、今は最高裁の判決待ちだった。テロ事件に関する疑いは晴れても、武器不法所持罪での実刑は確実だ。妻マニヤタ(ディア・ミルザ)の勧めもあり、サンジュは伝記作家のウィニー(アヌシュカ・シャルマ)に執筆を依頼する。
ウィニーは乗り気ではなく、サンジュに怪我をさせられたという不動産経営者のズビン(ジム・サルブ)からもよくない話を聞いていたが、実際にサンジュと会ってみると彼が真実を語ろうとしていることを直感。彼の人生に興味が芽生え、インタビューを引き受けることにする。
1981年。21歳のサンジュは大スターである父、スニール・ダット(パレーシュ・ラーワル)の監督作『ロッキー』で主演デビューを飾ろうとしていた。しかし、何事にも厳格な父にストレスを感じており、悪友でドラッグの売人でもあるズビンに勧められ、麻薬に手を出してしまう。ハイになったまま、夜中に恋人ルビー(ソーナム・カプール)の家に押しかけたサンジュは、彼女と彼女の父(ボーマン・イラニ)を怒らせてしまった。
さらに、往年の大女優だった母ナルギス(マニーシャ・コイララ)が癌で死期が近いことを知り、ますます薬物に依存するようになる。母はニューヨークの病院に入院。サンジュもニューヨークを訪れ、母のファンだったカムレーシュ(ヴィッキー・コウシャル)と出会って親友となる。彼のおかげでルビーとの仲が復活するものの、サンジュが再び薬物に手を出したため、彼女は去って行った。
『ロッキー』の公開直前に母ナルギスが他界。プレミア試写会で自らを反省したサンジュは涙を流してスニールに許しを乞い、アメリカのリハビリセンターへ通うことにする。一度は脱走したものの、カムレーシュやスニールの協力でやっと薬物依存を克服。帰国したサンジュは、再び近づいてきたズビンに強烈な一撃を食らわして決別するのだった。
アジコのおすすめポイント:
ボリウッドの大物スター俳優サンジャイ・ダットのスキャンダルにまみれた半生の真実を描いた作品です。監督は『きっと、うまくいく』で日本でも人気のラージクマール・ヒラニ。本編でも登場するサンジュの復帰作にして父親スニール・ダットと共演した『医学生ムンナ・バーイー』(03年)は、ヒラニ監督の長編デビュー作であり、監督はこのサンジャイ・ダットという俳優の半生をウィニーという伝記作家の目を借りて描いていきます。数百人の女性に手を出し、ドラッグと酒に溺れ、銃にまで手を出してしまった弱い男の背景には、父と息子の深い絆があり、最後には親友との積年のわだかまりが氷解するという感動のラストが待っています。この難役を年代ごとに演じ分けたのは、サンジュと同じくボリウッド映画界のサラブレッドスター、ランビール・カプール。『バルフィ!人生に唄えば』での純粋無垢な青年とは真逆の役柄を、見事に体現しています。そのほか、どの俳優も素晴らしいのですが、一番注目の新星は親友を演じたヴィッキー・コウシャルでしょう。本作については語り尽くせないほどの解説や裏話がありますので、詳細は松岡環さんが7回に分けて書いておられるスーパー解説をご覧ください。
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