慶州 ヒョンとユニ(慶州/Gyeonju)
story
北京大学の教授チェ・ヒョン(パク・ヘイル)は、久しぶりに韓国の大邱を訪れる。駅で煙草の匂いだけ嗅いでいると、母親(イ・ヒョンジョン)と二人連れの幼い少女(キム・スアン)が「タバコはだめ」と彼をたしなめた。
ヒョンは斎場でイ先輩(カク・チャヒョン)に出迎えられる。親しかったキム先輩(キム・ハクソン)が急逝したのだ。イ先輩は若い嫁(イ・ウヌ)が魔性の女で殺されたのかもしれないというが、彼女は礼儀正しかった。
ヒョンは、7年前に先輩たちと慶州へ行ったことを思い出す。その時に立ち寄った茶屋の壁に、春画があったのだ。あの春画はまだあるのだろうか? ヒョンは慶州へ行くことにする。そこで1泊して、翌日北京へ帰ればいい。
慶州へ着いたヒョンは、自転車を借りてのどかな街中をゆっくり見て回る。芝生で覆われた古墳群では、若者がデートし、子どもたちが遊びまわっていた。ヒョンは後輩のヨジョン(ユン・ジンソ)に電話して会う約束をする。大きな池のある公園のベンチに座っていると、大邱の駅で会った母娘が通り過ぎていった。
記憶を辿りながら古民家を改造した茶屋を覗いていると「とてもおいしいですよ」と通りかかったヨンミン(キム・テフン)に促される。茶屋は変わっていないが、今はユニ(シン・ミナ)という女主人が切り盛りしていた。
春画の話をすると、彼女は怪訝そうな顔をした。3年前から茶屋を始めたユニは知らないという。ヒョンはその部屋でお茶を飲むことにする。ユニはお茶を煎れながら、客がからかうので上から壁紙を貼ったのだと教えてくれた。どうりで、壁紙が一部めくられていた。
アジコのおすすめポイント:
とてもミステリアスで濃厚な1日を描いたドラマです。前半は旅をしているような気分に浸れますが、後半、ある分岐点を境に実は不思議な出来事が続いていたことがわかり、驚かされます。それは、現在と過去をつなぐ時空の歪みなのか。先輩の葬儀。壁に春画が飾ってあった伝統茶屋。そこで出会った美しい未亡人。そのほかにも、何度か会った母娘、占い師、暴走族、昔聴いたはずの水の音…などなど、いろいろな要素が混じり合い、この大きな丸い古墳が点在する不思議な空間、いわば死者と生者が共存するこの街で起こった奇妙な体験が描かれていきます。監督は中国の朝鮮族として育ったチャン・リュル。異邦人としての視点が活かされており、主人公たちの心の揺らぎを美しい映像に重ね、独特で詩的な作品に仕上げています。様々な解釈ができるので、主人公と共に謎解きを楽しんでください。
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