バーニング 劇場版(Burning)
story
運送会社でアルバイトをしているイ・ジョンス(ユ・アイン)は、ある日、配達先でイベントのキャンペーンガールから声をかけられる。「覚えてない?私、整形したの…」子どもの頃、同じ町内にいたと語る彼女はシン・ヘミ(チョン・ジョンソ)。今はモデルの仕事をしているという。
その夜、二人は酒場で食事した。ジョンスは大学を卒業後、アルバイトをしながら小説家を目指している。ヘミはパントマイムを習っているそうだ。アフリカ旅行のために貯金もしているらしい。「サン族には2つの飢えた人がいるの。リトルハンガーはほんとうにお腹が空いている人。グレートハンガーは生きる意味に飢えている人」
ジョンスはアフリカ旅行にでかけるヘミから猫の世話を頼まれる。坂道にあるヘミのマンションへ行くと、ベッドの下にエサを入れる皿やトイレもあったが、ボイルという名の猫は姿を見せなかった。「想像の猫?」訝しく思いながらも、ジョンスはそのベッドでヘミと肉体関係を持つ。
その日から、ジョンスはパジュにある実家へ引っ越した。一人住まいだった父が傷害事件で逮捕され、牛の世話をしなくてはならないのだ。母は幼い頃に家を出ており、姉も結婚していない。日中は対岸の北朝鮮からプロパガンダ放送が聞こえて来る辺鄙な田舎町、ここが故郷だ。
ジョンスはヘミの部屋を定期的に訪れたが、ボイルはいつも姿を見せなかった。そして半月後、ヘミから連絡が入り、空港へ迎えに来てほしいと頼まれる。再会したヘミは、現地で知り合ったスマートな青年ベン(スティーブン・ユァン)を連れていた。「遊びと仕事の区別がない」と語る彼は優雅で洗練されていたが、謎めいたところのある男だった…。
アジコのおすすめポイント:
今や世界的人気作家となった村上春樹の初期の短編「納屋を焼く」(82年)を出発点に、韓国の巨匠イ・チャンドン監督がおそるべき作品を作り上げました。全編を通じて流れるモグ(Mowg)のザワザワとした不穏な音楽が耳に残り、冒頭の出会いから予想外の結末まで、ずっと緊張感を保ちながら見つめることになります。監督と共同で脚本を担当したのはオ・ジョンミ。主人公たちの設定や関係性も大きく変わり、韓国ならではの社会状況を取り入れた作品になっていますが、「猫」「リトルハンガー」「グレートハンガー」「枯れた井戸」など、村上作品的記号が散りばめられており、まるで違和感がありません。主演は若手演技派のユ・アイン。ヒロインを新人のチョン・ジョンソが大胆に演じており、謎の男役はドラマ「ウォーキングデッド」シリーズでブレイクしたスティーブン・ユァンが演じて高い評価を受けています。グレートハンガーの踊り(多分)を踊っていたヘミはどこへ行ってしまったのか?なぜ、ビニールハウスを焼かなくてはならないのか?原作者の村上春樹氏自身も「まったく違う作品になっていて、とても面白かった」(TOKYO FM「村上RADIOプレスペシャル」2/3放送分)と絶賛する本作、ぜひスクリーンで謎解きに挑戦してみてください。
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