蝶の眠り(-----/-----)
story
50代の人気女性小説家、松村涼子(中山美穂)は最後の小説を書いていた。気に入らず、書いたばかりの原稿をシュレッターにかける涼子。明日から初めての大学での講義が始まる。これまで涼子は人前に出るのを嫌っていたが、今は自分を見せたいと強く思っていた。残された時間を意味のある時間にしたいのだ。
初めての講義はうまくいった。涼子は彼女を大学に推薦してくれた同期の石井(勝村政信)、彼女の熱烈なファンである学生のアンナ(石橋杏奈)に連れられて、居酒屋へ繰り出す。そこでは、韓国からの留学生ソ・チャネ(キム・ジェウク)がアルバイトをしていた。
その夜、店の小部屋で寝ていたチャネは、大きな音で起こされる。万年筆を忘れた涼子が、血相を変えて飛んできたのだ。万年筆は見つからなかったが、翌日、店長の大村(永瀬正敏)が万年筆を着服していたのを見て、チャネが涼子の自宅まで返しに行く。それがきっかけで、チャネは涼子の愛犬トンボを週に1回散歩に連れていくことになる。
涼子の家の書斎は大きかった。整然と並ぶ書庫に驚くチャネ。だが、涼子は視覚的に美しい整理をしたいと考え、本を色別に並べなおすアルバイトをチャネに頼む。それは楽しい作業だった。チャネは日本文学に憧れて留学してきたが、生活に追われる中で意欲を失い、今は大学には通わず、バイト代もゲームセンターで使い果たしていた。
涼子は元夫である峰 竜二(菅田 俊)の新作発表会にでかける。自分が遺伝性アルツハイマーの初期であると告白するためだ。一方、手首を傷めて原稿が書けない涼子は、チャネに手伝わせることにする。ICレコーダーに録音した原稿をチャネにパソコンで打ち込んでもらうのだ。そんなある日、トンボがいなくなり…。
アジコのおすすめポイント:
遺伝性アルツハイマーを発症した50代の美しい女性小説家が、偶然に出会った留学生の青年と過ごすうちに、最後の恋を記憶に刻むというラブストーリー…というよりは、ヒューマンドラマの趣が強い作品です。『子猫をお願い』でデビューしたチョン・ジェウン監督が日韓合作プロジェクトにエントリーしていたシノプシスが採用され、日本で映画化されることに。日本を舞台に日本語で製作されることになり、主演は監督が大ファンである中山美穂に決定。今や40代のミポリンですが、実年齢よりも年上の役柄を堂々と演じています。相手役に抜擢されたのは日本語が流暢なキム・ジェウク。受けの演技に徹して、いい感じのアンサンブルになっています。色別の書斎が登場する主人公の家は、建築家・阿部勤さんの自宅。「中心のある家」という著書があるように、正方形の独特な建築になっています。
|