| エターナル（シングルライダー/Single Rider）
story
タスマニア島の浜辺で息子のジヌ（ヤン・ユジン）が楽しそうに戯れている。広がる美しい景色。将来を思い、妻スジン（コン・ヒョジン）と一緒にオーストラリアへ語学留学させた息子から送ってきた映像だ。もう2年も会っていない。証券会社の支店長を務めるカン・ジェフン（イ・ビョンホン）は仕事人間だった。だが、数日後にはふたりが帰ってくる。また3人の生活に戻れる。
ところが、会社が多額の不良債権を出して破綻。顧客との信頼関係も、安定した収入も、支店長の座も、一夜にして失ったジェフンは、精神科の薬に頼らなければならないほど心のバランスを失っていた。さらに、妻から「用事ができたので、帰国を1週間延ばす」というメールが届く。その夜、顧客にお詫びのメールを書き終えた彼は、ネットで航空券を予約。オーストラリアへ旅立つ。
シドニーに到着したジェフン。住所は手の甲に書き、スマートホンは家に置いてきていた。しかし、どうやって探せばいいのか。その時、若い韓国人女性が妻たちが住む町の名前を尋ね、バスに乗り込んだ。ジェフンも同じバスに乗り込み、彼女と同じ町で降りる。家はすぐに見つかった。ところが、窓辺から見た妻は見知らぬ白人男性と談笑していた。ずいぶん親しそうだ。
動揺したジェフンはその場から逃げ去り、町を徘徊する。どうしてこんなことになったのか？ ジェフンはしばらく、遠くから妻子を見守ることにした。相手の男は隣に住むクリス（ジャック・キャンベル）で、ジヌと同い年の娘ルーシー（アニカ・ホワイトリー）がいた。彼には妻がいるが、意識不明のまま病院のベッドに横たわっている。彼は妻を愛しているようだった。
ある夜、ジェフンはバスで見かけた女性ジナ（アン・ソヒ）に声をかけられる。彼女はワーキングホリデーでオーストラリアに滞在していたが、不良グループに全財産をだまし盗られ、困っていた。オーバーステイなので警察には行けないという。同情したジェフンは、彼女の記憶を頼りに犯人たちのアジトを探し始めるのだが…。
アジコのおすすめポイント：
オーストラリアを背景に描かれるサスペンス・メロドラマです。と、一括りにするのはもったいないほど、深く大きな余韻を残す物語です。近年、王様やコミカルな悪党などを演じ、ハリウッドではアクションスターとして名を馳せているイ・ビョンホン。動的な役柄が多い彼が、微笑みもアクションも封印し、終始疲れ切った表情で苦悩をにじませるという静の演技を、見事に体現しています。イ・ビョンホン、やはりただものではなかった。そんな彼に「10年ぶりに素晴らしい小説を読んだかのような、心に深く響く作品」と評された本作。脚本はイ・チャンドン監督の元で映画を学んでいた女性イ・ジュヨン。勉強のために書いた脚本が注目され、ハ・ジョンウの制作会社が初の長編映画として制作を決定。イ・チャンドンが監修、イ・ビョンホンが出資と幸運なサポート得て、自から監督デビューを飾っています。終盤に思いがけない展開が待っていますが、美しいタスマニアの風景に癒されることでしょう。
|