あなた、その川を渡らないで
(My Love, Don't Cross That River)
story
美しい小さな村。川のほとりで暮らす98歳のおじいさん(チョ・ビョンマン)と89歳のおばあさん(カン・ゲヨル)。結婚76年目のふたりは、おばあさんが縫ったお揃いの韓服を着て、手をつなぎ、いつも一緒に出かけていく。
秋になると庭の落ち葉を掃除する。おじいさんは集めた落ち葉を両手ですくいあげ、おばあさんに振りかける。困った顔をしながら、おばあさんも負けじとおじいさんに落ち葉を投げる。冬も同じだ。真っ白に積もった雪を見て、おばあさんに雪玉をぶつけるおじいさん。ふたりは雪合戦を始める。そして、凍りついた手に息を吹きかけ、温め合う。
春になると、山菜を採りにでかけ、おばあさんがナムルを作る。花を摘み、お互いの髪に飾る。夏はポーチで昼下がりのお昼寝。涼風が吹く縁側に腰かけて談笑する。慎ましい日常生活。おばあさんが用意する食事に、おじいさんが文句を言ったことは一度もない。まずかったら残し、美味しかったら全部食べる。そして、食後に必ずお礼を言う。
楽しみにしていた老人会の遠足。皆と一緒にバスで歌い踊り、お弁当を食べ、お花畑を散策する。おじいさんはコマとゴンスンという2匹の犬を可愛がっている。うれしそうに遊ぶおじいさんを、おばあさんが愛情のこもった眼差しで見つめる。76年間、互いを見つめながら共に老いてきた。
ふたりは12人の子どもを授かったが、6人を幼くして亡くしていた。お正月、子どもや孫たちが訪ねてくる。皆で食卓を囲むと、懐かしい昔話に花が咲く。だが、おばあさんの誕生日で集まった時、長男と長女が言い争いを始めた。喧嘩を止めることができなかったおばあさんは泣いてしまう。
おばあさんは、おじいさんの咳がひどくなったことを心配していた。夜中も目が覚めてしまうおじいさんのため、灯りを消さずに寝る日々が続く…。
●アジコのおすすめポイント:
なんて可愛らしいおじいさんとおばあさんなのでしょう!こんな風に歳を重ねられるのなら、夫婦っていいなあ…と誰もが羨ましくなる理想のカップル、チョ・ビョンマンさんとカン・ゲヨルさんの15ヵ月間に密着したドキュメンタリーです。きっかけは、このお揃いの韓服。新聞に載ったおふたりをテレビ局が紹介し、それに目を留めたチン・モヨン監督が、自身の長編デビュー作として世界に発信したのでした。そのテーマは「真の愛とは何か」。小規模公開された本作は、口コミで感動が広がり800スクリーンにまで拡大。09年の『牛の鈴音』を超え、韓国ドキュメンタリー映画史上最高の480万人を動員しています。しかも、観客の半数近くが20代の若者だったとか。苦楽を共にしたおふたりの黄金の日々と別れを、大切な人を思いながらご覧ください。
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