ノーザン・リミット・ライン 南北海戦
(延坪海戦/Northern Limit Line)
story
NLL(北方境界線)とは、朝鮮戦争休戦後、国連軍が黄海に引いた分断線。北側の島は中国と北朝鮮に割譲されていたが、次第に北朝鮮が占有するようになっていった。
2002年6月、若い医務兵のパク・トンヒョク(イ・ヒョヌ)が高速艇チャムスリ号に赴任してくる。迎えたのは同期のギヒョン(キム・ドンヒ)だ。彼は船内を案内しながら同僚たちを紹介していく。操舵長ハン・サングク(チン・グ)は皆から信頼されている兄貴分のような下士官だ。
夜中に非常事態の召集がかかる。戦闘配置訓練だ。配置に着くまで何秒かかるか、計測しているのは新任の艇長ユン・ヨンハ(キム・ムヨル)だ。規律に厳しい上官だが、過去に銃殺を拒否して左遷させられた経歴の持ち主でもある。
時は日韓W杯サッカーの真最中。皆がテレビにかじりつき、勝ち進む韓国チームを応援していた。そんな夜、不振な船3隻が境界線を超えてきた。拿捕された男たちは漁師と名乗るが、見るからに軍人のような風貌をしている。しかし、W杯開催中のため、上層部の命令で男たちは解放された。
サングクは右手の震えが気になっていた。ユン大尉がそれに気づくが「私の目と君の腕で乗り切ろう」と励まし、地上勤務への転属も手配してくれた。そして29日、チャムスリ357号は編隊長(イ・チョルミン)が乗る232号と共に出航する。その夜、北朝鮮の警備艇が2隻、警告を無視して境界線を超え南下。ついに発砲してきた…。
●アジコのおすすめポイント:
2002年の日韓合同ワールドカップサッカーといえば、日本でも大いに盛り上がった年でしたが、その陰で実際に起こっていた悲劇を忘れまいと作られた作品です。国境付近では常に緊張関係が続いている韓国ですが、兵役のある韓国でも実戦に遭遇することは少ないでしょう。でも、このような挑発行為が行われると、即戦争さながらの状況に。船でラーメンを食べたり、サッカー観戦で盛り上がっていた普通の若者たちが、訓練されているとはいえ、実際に味わう恐怖や痛みがリアルに描かれています。7年がかりで映画を完成させたのは、これが2作目のキム・ハクスン監督。キム・ムヨル、チン・グ、イ・ヒョヌらが、犠牲となった人物を演じ、個人としての背景も丁寧に描かれています。エンドロールでは記録映像や、生き残った方々の証言も出てきます。身近に戦争の危機がある韓国だからこそ描くことができた本作。それは今も続いているのです。戦争とはどうやって起こり、何が奪われるのか、じっくりとご覧ください。
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