独裁者と小さな孫(The President)
story
とある国家の首都。華やかなネオンに彩られ、豊かに見えるその都の裏側では、独裁者として君臨する大統領(ミシャ・ゴミアシュウィリ)が容赦ない処刑を続けていた。大統領官邸では、幼い孫(ダチ・オルウェラシュウィリ)が幼なじみのマリアと踊っていた。大統領は将来の後継者である孫を抱き、執務室の窓から見渡せる街の灯りを電話一本で消したり点けたりしてみせた。
すべてが意のままになる。混乱する街をよそに孫と遊びに興じていたその時、点くはずの灯りが消えたまま、街が暗闇に閉ざされる。やがて銃声や爆発の炎が見え、またたくまに軍が反政府軍に掌握された。クーデターが起こったのだ。大統領は護衛(ラシャ・ラミシュヴィリ)に命じて直ちに亡命の準備にかかる。
妻や娘たちと空港に向かった大統領は、軍楽隊に迎えられ、視察旅行として国外脱出を謀ろうとする。が、大統領は事態を掌握してから別ルートで脱出することに。一人残ろうとするが、大好きなマリアと離れたくない孫も一緒に残ってしまう。しかし、状況はすでに変わっていた。
暴徒や民兵の目をかいくぐり、護衛の運転する車で脱出した大統領は、昔馴染みの売春婦(ラ・スキタシュヴィリ)を訪ねる。孫を預けるためだったが、暴徒化した兵士が次々と訪れており、彼女に拒絶される。護衛にも裏切られた大統領は郊外の民家に逃れ、服やかつらで民間人に変装。羊飼いや旅芸人に変装して孫と逃亡を続け、海をめざす…。
●アジコのおすすめポイント:
パリを拠点に活動を続けているイランのモフセン・マフマルバフ監督の最新作です。ある架空の国で起こったクーデター事件と、そのせいで逃亡を余儀なくされる大統領と孫の運命の旅路。非情な独裁者であった大統領が庶民に紛れ込み、自分を非難する人々や自分に苦しめられていた人々の助けを借りて生き延び、彼らの視点から自分を見つめ直していきます。それをそばでじっと見つめていくのが、孫である幼い少年。撮影はジョージア(グルジアから2015年4月22日に改称)で行われ、ジョージア出身の俳優たちが出演しています。果たして、彼らの旅路の果ては…? 監督からのメッセージをご紹介しておきましょう。「本作は権力、和解、そして果てしなき暴力の連鎖を断ち切ることへの希望について語る現代の寓話であり、自由と民主主義を求める革命の末に暴力に歯止めがかかる可能性を模索した作品です」
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