恐怖分子(恐怖イ分子/Terrorizers)
story
朝。パトカーがサイレンを鳴らして走っている。銃声の音。若いカップルの部屋。シャオチャン(マー・シャオチュン)が目を覚まし、カメラを持って外へ飛び出して行く。別の部屋では、小説が書けなくて苛ついている妻のイーフェン(コラ・ミャオ)を残し、リーチュン(リー・リーチュン)が仕事にでかけていった。
口論と銃声。道路に倒れている男。それは小さな賭場で起きた事件だった。駆けつけたクー警部(クー・パオミン)は、カメラをかまえたシャオチャンを追い返す。裏路地に入ったシャオチャンは、建物の裏から若い女の子シューアン(ワン・アン)が飛び下りるのを目撃。後を追おうとした男は警察に捕まった。
物陰に隠れていたシューアンは、足を怪我したまま逃走する。その姿をシャオチャンはカメラに収めていた。道路で倒れたシューアンは、たまたま車で通りかかったリーチュンの病院で手当てをされる。病院では、リーチュンの上司が心臓病で亡くなり騒然としていた。リーチュンに出世のチャンスが巡ってくる。
厳しい母親に連れ戻されたシューアンは、部屋に閉じ込められ反抗的になっていた。時間を持て余した彼女は、電話帳でリー・リーチュンの名前を見つけ電話してみる。「大事な話があるから奥さんに会いたい」途中で切れた若い女からの電話に、イーフェンは行き詰まっていた小説のヒントを得るのだが…。
●アジコのおすすめポイント:
1980年代から始まった台湾ニューシネマを、ホウ・シャオシェンらと共に牽引したエドワード・ヤン監督の出世作が、デジタルリマスターにより美しい映像となって蘇りました。長編3作目となる本作は、当時の世相を反映し、無軌道な若者の行動や大人の世界のエゴも活写。暇つぶしにかけた1本のいたずら電話が思いがけない波紋を広げ、悲劇につながっていく連鎖を描いています。問題を起こす混血少女シューアンを演じたワン・アンは、実際に見知らぬ番号にいたずら電話をしたことがあり、その告白を元に本作の構想ができあがったとのこと。青少年と犯罪との危うい接点は、代表作となった次作『[牛古]嶺街少年殺人事件』へと発展していきます。スクリーンではなかなか観ることのできない名作の上映を、この機会にぜひご堪能ください。
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