薄氷の殺人(白日焔火/Black Coal, Thin Ice)
story
1999年。華北省にある複数の石炭工場で、バラバラに切断された死体が発見される。見つかった衣類と身分証から、被害者はリアン・ジージュンと断定。ロンロンクリーニングに勤める若く美しい妻ウー・ジージェン(グイ・ルンメイ)は、泣き崩れる。
担当刑事のジャン・ズーリー(リァオ・ファン)は、容疑者の弟と仲間を捕らえるが、銃を奪われて発砲されたため勢いで射殺してしまう。自身も撃たれて入院するが、事件はそのまま迷宮入りに。ロンロンクリーニングでは、妻が夫の遺骨を店の前の木の下に埋葬していた。
5年後の2004年、冬。怪我のせいで警察から工場の保安課に転職したジャンは、酒浸りの日々を送っていた。道路で酩酊して、バイクをすり替えられるほどだ。そんなある日、張込み中のかつての同僚ワン(ユー・アイレイ)と再会する。彼は新たな連続殺人事件を追っていた。
彼の話では、いずれの事件にも同じ女が関係しているという。それは、5年前の事件の被害者の妻ウー・ジージェンだった。ジャンは単独で調査を開始。ロンロンクリーニングの客としてウーに近づき、5年前に彼女が客の上着をダメにしてトラブルになった話を店主(ワン・ジンチュン)から聞き出す。
ジャンはウーを誘ってスケート場へ行き、帰りに映画館で映画を観る。そんな二人を一台のトラックが追い、その後をワンの車が尾行していた。乗っていたのは、死んだはずのリアン・ジージュン(ワン・シュエビン)だった。スケート靴を肩にかけたままトラックを降りたリアンを、張り込んでいたワンが逮捕するが、殺されてしまう…。
●アジコのおすすめポイント:
中国から新たな才能が登場しました。昨年のベルリン国際映画祭で見事2冠を制した本作。監督は本作が3作目となる脚本家出身のディアオ・イーナン。中国東北部の石炭列車が通るような町を舞台に、猟奇殺人事件と謎の若き未亡人、落ちぶれた元警官が織りなす濃密なクライム・サスペンスドラマを、暗闇に浮かびあがる鮮やかな色彩と大胆なジャンプカットで描いていきます。主演は本作でベルリン影帝に輝いたリャオ・ファン。男たちを翻弄する妖しい人妻をグイ・ルンメイが儚い表情で演じます。演出の斬新さは音楽にも発揮されており、終盤とエンディングロールで流れる歐陽菲菲の1976年の台湾大ヒット曲「向往」が強く印象に残ります。男は女を、女は男を、愛していたのか? それとも、利用していただけなのか? じっくりとご堪能ください。
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