収容病棟(瘋愛/Til Madness Do Us Part)
story
前編:雲南省の精神病院。男性患者の収容病棟にカメラが入って行く。中庭を囲む回廊には鉄格子。病室のいくつものドア。3床から6床ほどのベッドが並ぶ個室たち。消灯時間を過ぎても、暗がりの中、患者たちが回廊を行き来する。ベンチに座る者。回廊を走る者。限られた世界の中で、男たちは動き回る。
ヤーパと呼ばれる青年は、収容6年。いつも誰かのベッドに潜り込み一緒に眠りたがる。収容5ヶ月のマー・ジェンは兄が迎えに来ると信じ、回廊を走り回る。食べ物に執着する収容12年のマー・ティエンロン。身体に字を書くウー・シェンソンは収容3年。まだ1ヶ月目のイン・ティエンシンはドアを蹴飛ばして、罰を受けてしまう…。
後編:新しい収容者のチョン・ジュアンユエンは、病院に入れられたことが納得できない。翌日、娘が面会にやって来る。前編にも登場したマー・ユンドーは収容12年目。妻が定期的に差し入れにやって来る。今日は息子も同伴。新しい着替え。蜜柑。だが、ときどき気持ちが噛み合わない。
収容11年目のジュー・シャオイェンが病院を出て家に帰る。久しぶりの自分のベッド。夜、ひたすら道路を歩く。どこまでも。収容9年目のプー・チョンイーは、下の階の女性患者と恋をしている。3階の入口までやって来た彼女と鉄格子をはさんだデート。寄り添う男たち。屋上で春節の花火があがる。
●アジコのおすすめポイント:
ドキュメンタリーというと構える人もいるかもしれませんが、ワン・ビンの作品であれば、どんなに長くても大丈夫!と自信を持って言えるほど、映像に力があり、食い入るように見入ってしまいます。今回の舞台は精神病院ですが、収容病棟というように、入院というよりそこに収容されている人々の理由は様々。病気の人もいれば、家庭の事情や、暴力的だったり、事件を起こしたり、政治的な陳情を行ったり。精神疾患というよりも「喧嘩して捕まった奴がほとんどだ」という言葉が印象的です。そして、長く収容されている内におかしくなることもあるとか。隔絶された空間で生きる彼らの胸のうちを、カメラが節度ある距離で写し取っていきます。そこにはそれぞれのドラマが存在しています。撮影されたのは2013年の1月から4月までの約3ヶ月半。彼らは役者ではなく、今もこうして生きているのです。
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