ブッダ・マウンテン〜希望と祈りの旅
(観音山/Buddha Mountain)
story
2009年、中国の古都四川省成都市。引退した京劇女優チャン・ユエチン(シルヴィア・チャン)は、前年5月12日に起きた大地震の日に一人息子を亡くし、劇団内でもかつての弟子から冷たくあしらわれていた。ユエチンは孤独だった。彼女は自宅に「貸し間あり」の札を出す。
父親の再婚をきっかけに、家を出ることにしたディン・ボー(チェン・ボーリン)、客とのいざこざで唱っていたクラブを辞めたナン・フォン(ファン・ビンビン)、二人といつも一緒につるんでいる太っちょ(フェイ・ロン)の3人は、ユエチンの屋敷が気に入り、共同で引越して来る。
世代の違うユエチンと3人。早朝の京劇レッスンの音、食生活など、最初はことごとく違う生活習慣に反発し合う。ある日、鍵のかかったガレージから出て来たユエチンが泣いているのに気づいた3人は、ガレージに忍び込んで壊れた車を発見する。それは、ユエチンの息子の車だった。
3人はユエチンを元気づけるため、他愛のないいたずらをしたり、優しく接するようになる。そんな彼らに、ユエチンも次第に小さな愛情を抱くようになる。ユエチンと3人はようやく理解し合えたかに見えた。しかしある日、ユエチンが手首を切って自殺をはかってしまう。
3人は修理した車にユエチンを乗せ、以前、貨物列車に忍び込んでたどり着いた観音山の寺に連れて行く。そこには地震で崩れた寺と仏像があった。その日から、4人は寺と仏像の修復を手伝いに、観音山へ通い始める。
●アジコのおすすめポイント:
ファン・ビンビンと組んだ『ロスト・イン・北京』で注目された女性監督リー・ユーが、再びファン・ビンビンと挑んだ意欲作です。息子を失った悲しみが癒えないまま、孤独に暮らす元京劇女優と、それぞれの家庭環境で父親との関係に問題を抱える若者3人が、偶然一緒に暮らすことになり、最初はぎこちないものの、次第に疑似家族として温かい人間関係を築いていく物語。さりげなく性の問題も盛り込みつつ、それぞれが安らぎの場を見つけていきます。結末をどうとらえるかは、世代や境遇によって受けとめ方が違うかもしれませんが、その複雑な感情や思いもしっかりと映像に映し込まれています。10年の東京国際映画祭で2冠受賞。
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