イップ・マン最終章
(葉問:終極一戦/Ip Man:The Final Fight)
story
1949年、イップ・マン(アンソニー・ウォン)は日本軍に家を接収され、生活に困窮。広東省の佛山に愛する妻・ウィンセン(アニタ・ユン)と子供たちを残し、単身香港へ渡る。労働組合の委員長を務めるション(ティミー・ハン)の厚意で組合ビルの屋上を間借りしたイップ・マンは、そこで地元の庶民たちに詠春拳を教えることになる。
集まったのは、ションの他、寡黙な警察官のタン・セン(ジョーダン・チャン)、留置所の看守を務めるウォン・トン(マーベル・チャウ)、トラム運転手のン・ザン(ドンニー・ウー)たち。その中には、武侠小説好きのセイムイ(ジリアン・チョン)や正義感の強い工員のリー・キン(ジャン・ルウシャ)といった女性たちもいた。しかし、イップ・マンは決して武館の看板を出そうとはしなかった。
1951年。イップ・マンはいつもウィンセンの訪問を楽しみにしていたが、中国と香港の国境管制実施に伴い、彼女の渡航ができなくなってしまう。また弟子たちも、労働ストライキや警察内での汚職など、厳しい現実に頭を悩ませていた。さらに、イップ・マンは弟子たちの対立から、白鶴派宗師のン・チョン(エリック・ツァン)と一戦を交えることになるが、武術を通して2人の心は通じ合うことになる。
1960年、佛山でウィンセンが亡くなってしまう。彼女の死に立ち会えなかったイップ・マンは、ショックから精神を病むが、クラブ歌手ジェニー(チョウ・チュウチュウ)に亡きの妻の面影を重ね、彼女と親密な関係になることで、以前の自分を取り戻していく。そして翌年、佛山から息子のイップ・チュン(チャン・ソンウェン)がやってきた…。
●アジコのおすすめポイント:
本作はデニス・トーが若きイップ・マンを演じた『イップマン 誕生』と対を成す、イップ・マン晩年の物語。故郷の佛山から香港に渡り、たくさんの弟子たちを育て、息子であるイップ・チュンに詠春拳の映像記録を撮影させるまでを描いています。最愛の妻が亡くなった後、彼を支えた女性のことも描かれており、強く清廉なカリスマ的イメージだけはなく、生身の男性としての等身大の姿や老いも描かれます。監督は香港の市井の人々にこだわるハーマン・ヤウ。主演のアンソニー・ウォンはいつものぎらぎらした男臭さを消し去り、老境の渋い姿を好演しています。妻のウィンセンを演じるのは、香港映画ファンには懐かしいアニタ・ユン。そして、本作でもイップ・チュンご本人が雑貨店の店主役でカメオ出演。終盤、ハリウッドから凱旋したブルース・リーが師匠を訪ねるシーンがありますが、イップ・マンの人柄や2人の関係を知る興味深いエピソードとなっています。
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