ビー・デビル
(キム・ボンナム殺人事件の顛末/Bedevilled)
story
ソウルで暮らす独身女性ヘウォン(チ・ソンウォン)は、他人との関わりを避け、昔の友人から届いた手紙も読まず、淡々とした日々を送っていた。ある日、ストレスから勤めている銀行でトラブルを起したヘウォンは休暇を命じられ、都会生活から逃れるように、子供の頃に暮らした思い出の島へとやってくる。そこは、たった9人の住民だけが暮らす絶海の孤島だった。
彼女を出迎えたのは、生まれてから一度も島から離れたことがない幼馴染みのキム・ボンナム(ソ・ヨンヒ)。島で結婚したボンナムは、人なつっこい笑顔でヘウォンの帰郷を喜び、娘のヨニ(イ・ジウン)や家族を紹介した。そしてヘウォンがかつて祖父と暮らした家に着くと、親身に食事や身の回りの世話をするのだった。
だが、その明るい表情の陰には、地獄のような苦しみに耐えてきた日々があった。昼は姑たちに畑で奴隷のようにこき使われ、夜は義弟の慰み者になり、夫婦仲の冷えた夫からは暴力の毎日。人としての価値も尊厳も踏みにじられながら、たったひとつの希望を胸に、地を這うように生きてきたのだ。それは、ヨニと共に島から逃げ出すこと。
ボンナムの家族の不自然さに、ヘウォンもじき気づいていく。やがてボンナムは神にすがるような思いで、ヘウォンに「ソウルへ連れていってくれ」と懇願する。だが、面倒から逃れようと島を訪れたヘウォンにとって、それは煩わしいことでしかなかった。そんなある日、ついに取り返しのつかない悲劇がボンナムを襲う…。
●アジコのおすすめポイント:
こんなことがあっていいの?!とびっくりするような境遇にいる女性が、ある事件をきっかけに、ついにキレてしまうという壮絶な物語です。原題にもある通りの大殺戮が繰り広げられ、その凄さまじさは公開中の『悪魔を見た』といい勝負。が、大きく違っているのは、殺人鬼と化してしまうのが女性であること。観客は皆、彼女に同情するので、ある意味スカッとしてしまうかもしれません。それもこわいですが、そもそも、なぜこんなことになってしまったのか? そこにテーマが隠されています。監督はこれがデビュー作のチャン・チョルス。誰もが尻込みしたという主演を堂々と演じたソ・ヨンヒ(『チェイサー』でもひどい目に!)と共に、たくさんの賞を受賞している注目の新人監督です。
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