空を歩く少年(Da Capo)
story
父親(イ・ソンホ)の再婚を認めることができない娘(ホ・イジェ)は、死への願望を抱きながらオートバイに乗って配達のアルバイトをしていた。彼女の20歳の誕生日の日、指定のマンションに荷物を取りに行くと、ある女性(チヒョン)から8歳になる男の子(カン・サン)を配達して欲しいと頼まれる。
配達先は結婚式場で、受取人は式を挙げたばかりの新郎だった。しかし、身に覚えのない新郎は受取りを拒否し、返送を主張。やむなく2人がマンションに戻ると、依頼人の女はすでに自殺していた。葬式の日、娘は少年が女性の息子ではなく、少し前に孤児院からもらわれてきた子どもであることを知る。
聖書の一節を朗々とそらんじ、どこか人生を達観したような少年の名前はイエス。参列した親戚からも見放され、引き取り手のいなくなったイエスは、「ここではないどこか」へ自分を配達して欲しいと娘に頼む。居場所のない彼に自分と同じ空気を感じた娘は願いを聞き入れ、父の家から強引に借りて来た車で旅に出る。
「いくつになったら結婚できる?」と無邪気に問うイエスと海で遊び、山では憂さ晴らしの方法をイエスに教える娘。やがて、たどり着いた孤児院では、子どもたちがイエス・キリストを主人公にした劇を上演中。かつてイエスもここで主人公を演じ、その演技力を絶賛されていたのだった。そしてそこには、イエスが母のように慕うボランティアのマリア(ソン・ウソン)が待っていた。
●アジコのおすすめポイント:
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で『ノルウェイノモリ』が上映されたノ・ジンス監督の長編デビュー作品。繊細過ぎて壊れそうな心を隠すように強がって生きている、孤独な娘と少年のロード・ムービーです。特に不思議な少年を演じるカン・サンの強い眼差しが印象的。2人の旅は微笑ましく、年は違えどお似合いのカップルとも言えるでしょう。キリスト教をモチーフにしたストーリー展開にも韓国らしさが伺えますが、その一方で偽善的な人々も描かれており、それゆえに少年の神秘さが増しています。果たして少年はほんとうにイエスなのか? 結末ははらはらさせられますが、最後には2人とも自分から幸せをつかみます。自から心を開けば幸せはすぐそばにある。寓話のようで印象的な作品です。
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