冬の小鳥(旅人/A Brand New Life)
story
1975年。新しい服を着た9歳のジニ(キム・セロン)は、大好きな父(ソル・ギョング)に連れられソウル郊外にやってくる。高い鉄格子の門の中では、幼い子どもたちが庭で遊んでいる。父親と離されたジニは子どもたちがいる部屋に通されるが、状況が分からず外に飛び出してしまう。目に入ってきたのは、門のむこうに去る父の背中。そこは、孤児が集まるカトリックの児童養護施設だった。
自分は孤児ではないと主張するジニは、父に連絡を取るよう院長(オ・マンソク)に頼む。出された食事にも手をつけず、反発を繰り返すジニ。ついには脱走を試みるが、いざ門の外へ足を踏み出しても途方にくれてしまうのだった。
施設には、時に厳しいが子どもたちの幸せを願っている寮母(パク・ミョンシン)や、足が不自由なため施設に残っている年長のイェシン(コ・アソン)がいた。年上のスッキ(パク・ドヨン)は頑なに周囲に馴染もうとしない反抗的なジニを疎ましく思いつつも気にかけ、ジニの世話を焼くようになる。やがて、すっかり仲良くなったジニとスッキは、傷ついた小鳥を庭で見つけ、こっそりと世話を始めた。
ある日、健康診断のためにやってきた医者(ムン・ソングン)に、なぜこの施設に来たのかと質問されたジニは、ぽつりぽつりと話し始める。父親と新しい母との間に生まれた赤ん坊の足に安全ピンが刺さっていて、それが自分の仕業と誤解されたから…。話しながらジニの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていく。
●アジコのおすすめポイント:
フランスで女優や衣装デザイナーとしても活躍していたウニー・ルコント監督が自ら暖めていた脚本を、イ・チャンドン監督のサポートで完成させた長編デビュー作です。養子としてフランスへ渡った監督の経験が反映されており、まったくの自伝ではありませんが、親に捨てられた子どもが感じる絶望や喪失感、そして再生へと至る逞しさが繊細に描かれています。その難役を見事に体現しているのが、あどけなくも強い眼差しを持つ子役のキム・セロン。一目観たら忘れられない印象を持つ彼女は、現在韓国で大ヒット記録中の『おじさん』でウォンビンと共演。今最も注目したい小さな女優です。同じく『グエムル/漢江の怪物』で注目されたコ・アソンちゃんも出演。すっかりお姉さんになりました。父親役ソル・ギョングの顔は一瞬しか見えませんが、そこにも深い意味が込められています。
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