台北に舞う雪(台北瓢雪/Snow Fall in Taipei)
story
台湾北部の渓谷沿いを走るローカル線の終点、菁桐。この小さな町で孤児として育ったモウ(チェン・ボーリン)は、幼い頃に町を出て行った母がいつか帰って来るのを待ちながら、町中の雑用をこなして忙しく暮らしている。それは、自分を育ててくれた町の人々への恩返しだった。
ある日、一人の若い女性が駅に降り立つ。その頃、新聞やテレビでは、売出し中の大型新人歌手失踪事件が報じられていた。仕事帰りにカフェに立ち寄ったモウは、酔いつぶれている彼女に宿を世話し、翌日の部屋探しも手伝う。筆談でメイ(トン・ヤオ)と名乗る彼女は、声が出ない。メイは新作発表前に声が出なくなり、台北を飛び出して来たのだ。
人なつっこいモウにメイはすぐに打ち解け、2人は一緒に過ごすことが多くなっていった。モウの馴染みの食堂で働き始めたメイは、明るい笑顔を見せるようになり、またモウが紹介した漢方医マーさんの薬の効果で、喉の調子も少しずつ良くなっていく。メイは故郷の青島に降る雪について懐かしそうに語り、いつか一緒に行こうとモウを誘った。
彼女はずっとここにいるわけではない、回復したら元の世界に戻るだろうと自分に言い聞かせながらも、モウは恋心を募らせる。一方メイは、モウのやさしさに癒されながらも、音楽プロデューサーのレイ(トニー・ヤン)への思いを断ち切れずにいた。
そんなある日、芸能記者のジャック(モー・ズーイー)がメイを探しに町へやって来る…。
●アジコのおすすめポイント:
なんといっても一番の見所は、菁桐(チントン)という町の美しさ。美術監督出身のフォ・ジェンチィ監督ならではの映像美が、この作品でもしっかりと活かされています。いつもの中国大陸を舞台にした大自然と違い、今回は台北のような都会の風景も描かれますが、どこを撮っても独特の詩情を醸しているのが特徴といえるでしょう。そんな背景を舞台に出会う孤独な2人が、互いに惹かれあっていく様は微笑ましく、2人の幸せを願わずにはいられないのですが、ここにはもう1つのテーマがあって、主人公たちが一歩踏み出すというところで終わっています。ラストシーンについては、監督インタビュー(ネタバレあり)で聞いていますので、気になる方はそちらをどうぞ。それにしても、チェン・ボーリンはやっぱり自転車が似合いますねえ。
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