新宿インシデント
(新宿事件/Shinjuku Incident)
story
日本海沿岸・若狭湾の座礁した船から、大勢の人間たちが浜辺に這い上がってきている。中国からの密航者たちだ。自転車でパトロール中の巡査がそれを目撃して近づくが、密航者のひとりに襲われる。散り散りに逃げる密航者の中に鉄頭(ジャッキー・チェン)がいた。
鉄頭は中国東北部・黒龍江省の寒村で、トラック整備士として働いていた。誠実で働き者の彼には、シュシュ(シュー・ジンレイ)という幼なじみの恋人がおり、10年以上前に、彼女は叔母を頼って日本に留学していたのだが、その叔母が亡くなった後、音信不通になってしまった。恋人を探し出すため、鉄頭は日本に不法入国したのだった。
蛇頭から渡された偽造パスポートはなくしたが、当座しのぎの日本紙幣を握りしめ、鉄頭は友人のいる東京・新宿へと向かった。やっと歌舞伎町にたどり着き、警察の目をかわして、密入国者たちが住む大久保のアパートを訪ねると、阿傑(ダニエル・ウー)が心配顔で待っていた。同郷の友人の彼だけが頼りだった。
しかし、日々の暮らしは日雇いに最底辺の仕事に追われ、恋人を探す暇もない。そんなある日、下水道工事の作業中に警察の手入れが入る。手錠を目にしてやばいと思った鉄頭は、その場から逃げ出し、刑事の北野(竹中直人)が追いかけるが、北野は途中で足を滑らせ、流れの急な下水道に落ちてしまう。泳げない彼を助けたのは鉄頭だった。中国語のできる北野は「借りがひとつできたな」と鉄頭を見逃す。
そしてある夜、鉄頭は阿傑と厨房の手伝いに入ったナイトクラブで、ついに恋人のシュシュを見つける。しかし、彼女は新宿を取り仕切る三和会の幹部・江口(加藤雅也)の妻になっていた。鉄頭はショックを受けるが、帰郷することもできない。国外脱出の時、官憲をひとり殺しているからだ。ここ新宿で生きて行くしか、道はない。そう決心した鉄頭は、金を稼ぐために、次第に犯罪に手をそめていく…。
●アジコのおすすめポイント:
いつものジャッキー映画とは違います。喧嘩のシーンはあっても、いわゆるカンフーアクションやアクロバティックなアクションは一切出て来ません。さらに、自ら悪に染まって行くというキャラクターを初めて演じています。というのも、監督は社会派のイー・トンシン。かつて、新宿・歌舞伎町では、日本の暴力団による抗争が勃発していましたが、そこには、アジア系移民の派閥グループが深く関与していたとか。その事実に着目したイー・トンシン監督が、当時の状況や事件を丹念に調べ、実話にもとづいてストーリーを組み立てていった渾身作です。竹中直人や加藤雅也など、大勢の日本人キャストも出演していますが、セリフがおかしな日本語になっていないところも好感度大。あくまで、リアルにこだわる監督ならでは。最も悲惨な役柄を演じるダニエル・ウーも、俳優としてさらにステップアップしたようです。見応えあります。男のドラマをがっつりとご覧ください。
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