長江哀歌(三峡好人/Still Life)
story
どこからか歌が聞こえる。どうやら船の上らしい。花札をする人、タバコを吸う人、携帯電話をかける人、手相を見る人。中国の今を生きる人々。一人の男が暑さのために上着を脱ぐ。その後ろに長江・三峡の絶景が見える。
男は、16年前に別れた妻子を探しに、山西省からやってきた炭鉱夫ハン・サンミン(ハン・サンミン)。昔、妻が住んでいた場所にバイクで連れてきてもらうが、すでにそこは三峡ダム建設で水の底に沈んでいた。サンミンは、しばらく三峡の街、奉節(フォンジェ)に腰を落ち着け、妻子を探すことにきめる。紹介された安宿には、マーク(チョウ・リン)という若者がいた。彼は『男たちの挽歌』のチョウ・ユンファが大好きで、真似するのが得意だった。サンミンはマークと親しくなり、解体作業所で働いて妻を探しながら、ときには彼と酒を飲み、携帯番号を交換するようになる。
サンミンが眺める峡谷を、一人の女が眺めていた。彼女の名はシェン・ホン(チャオ・タオ)。三峡に働きに出て2年も音信不通の夫を探しに、山西省からやってきた。工場責任者の妻は、夫グォ・ビン(リー・チュウビン)を知っていたが、もう夫はここを離れ、荷物だけが残っていると言う。シェン・ホンは、夫の友人ワン・トンミン(ワン・ホンウェイ)を訪ねる。優しいトンミンは、夫の今の職場に案内してくれたが、夫は留守だった。翌日、シェンホンはようやく夫と会うが、悪びれもしない夫に背を向け歩き出す。
眼下にシェン・ホンの乗る船が行く。サンミンが、その峡谷を眺めている。いよいよサンミンの宿も取り壊されようとしていた…。
●宣伝担当者のおすすめポイント:
物語の背景となるのは中国の一大国家事業といわれる、長江の三峡ダム建設。2600年もの歴史ある街が、たった2年で水底に沈み、立ち退きを強いられる人の数は130万人にのぼります。厳しい現実を前に、言葉は少なくとも力強く生き抜く市井の人々の姿にいつしか魅了され、主人公サンミンの“だるだるランニング姿”もステキに見えてきます。突如UFOが出現したり、ビルが飛んで行ってしまうなど、ジャ・ジャンクー監督の遊び心あるシーンもお楽しみください。
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