楽日(不散/Goodbye, Dragon Inn)
story
今日で閉館、という台北の古い映画館「福和大戯院」。その最期の日の巨大なスクリーンには、キン・フー監督の傑作『龍門客棧/Dragon Inn』*が映し出されている。満場の観客席から湧きあがる、喝采の記憶…しかし今、観客席にあるのはまばらな人影。
足の悪い受付係の女(チェン・シャンチー)は、巨大な桃饅頭を温めている。一人で食べるには大き過ぎる。いや、一人では食べきれない大きさの饅頭が、必要だったのだ。半分に切った桃饅頭を袋に入れ、彼女は意を決して映写室へと向かう。そこには、彼女が密かに思いを寄せている映写技師(リー・カンション)がいるのだ。
がらんとした客席には、真剣にスクリーンを見つめる観客の姿があった。往年の映画スター、苗天(ミャオ・ティエン)と石雋(シー・チュン)。彼らは『龍門客棧』の主演男優でもある。万感の思いを込めてスクリーンを見つめる石雋の目に光る涙。
しかしここには、別の映画ファンたちも出没していた。観客席を包む闇と光と大音量にまぎれて繰り広げられる、男たちの怪しい人間模様。それは男子トイレの中や、薄暗いバックヤードへと舞台を移し、ますます真剣と滑稽の度合いを増す。孤独に打ちひしがれた男(三田村恭伸)の背後には、女幽霊(?)まで現れるのだった…。
*『残酷ドラゴン/血斗竜門の宿』という邦題でDVDになっています。
●宣伝担当者のおすすめポイント:
実在する映画館が閉館になると聞き、半年間その場所を借りて撮影された『楽日』。怪しげな人間模様が繰り広げられるなか、強烈な存在感を出しているのが日本人俳優・三田村恭伸氏。蔡明亮作品をこよなく愛す一ファンが、突然の銀幕デビューを果たした彼の演技にご注目。そして、誰もいなくなった客席を撮らえた5分間の不動ショットは必見です!
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