自然光が似合う野生的なイメージに繊細な魅力も
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●演技の源にあるものと将来
Q:とても自然に演じておられましたよ。ご自身も狩りなどされていたそうですが、モーナ・ルダオを演じる上で苦労したことはありますか?
ダーチン「狩りは、昔から僕たちの集落で行われて来た習慣です。僕たちの部族になくてはならない文化の一つ、生活の一部となっています。先輩や年長者たちは皆、狩りをする。この習慣は今も続いているように、これからも文化として残って行くでしょう。
僕にとって演技というのは、生活の一部のような気がします。演技を作るというよりは、普通の生活の延長として演技があるようです。普段の生活とあまり変わりなく、緊張しないよう自分をリラックスさせて、いつもの通りにやる。それが大事なのではないでしょうか。
たとえば、水を飲むシーンでも、水を飲む動作をわざわざ作るのではなくて、いつも自分がどうやって水を飲んでいるかということ。ライフスタイルの中から演技ができあがってくるように思います。頭でこうしようというのではなく、普段の生活と体で覚えて来たものが、演技になっていくという感じです。
原住民の生活で重要なのは、たとえば眼でどこを凝視するか、どうやって見るかということ。相手を射るような眼というのは、生活の中から出てきます。だから、生活と演技はしっかりと結びついていると思います」
映画の中でも眼がすごく印象的でしたね。
ダーチン「モーナ・ルダオという人は部族の英雄であり、とても個性的な人でした。あの時代の原住民の頭目ですから、かなり凶暴な面もあり、頭目としての勇ましさをすごく持っていた人です。そして、人を屈服させるような胆力もある。とても能力のある人物でした。それらは、モーナ・ルダオの父親から教えられ、ずっと続いてきたことです。
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若き日のモーナ・ルダオに扮し、狩場で闘いに挑む冒頭のシーン
水の中で滑らないようサンダルを履いたり、足にラップを巻いたりと、見えない所で様々な工夫がされている
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(c)2011 Central Motion Picture Corporation & ARS Film Production
この個性的なモーナ・ルダオを演じるには、彼がどういう人だったのか、なるべくそれに近づいていくように演じていきました。また、ウェイ・ダーション監督が求めるモーナ・ルダオ像がどういうイメージなのか、それにも近づいていくように演技をしていきました」
Q:ご自分の演技の中で特に気に入っているシーンは?
ダーチン「大作ですから全部が好きですが、特にといえば、初めて出草するシーンが好きです。この場面では、2週間かけて山に入ったのですが、山の中で撮影したのは7日間で、残りの7日間は行き来した道のり。合計で7日間くらいかかって大変でした。
水中シーンはプールで撮影しましたが、これがまた大変で、刀を持ったまま水の中で演技をしなくてはなりません。顔切るなどいろいろしたので、そういうところはすごく注意して、監督もとても気を配ってくれました。水に潜って30秒で演技して、また浮き上がってこなくてはならない。普通、人は水に潜るとすぐに浮いてしまうので、そこも撮りにくくて大変でした。でも、そういうシーンが一番好きですね」
Q:これからどんな俳優になっていきたいですか?
ダーチン「いろいろな役柄をいただいて、自分に合うと思う役であれば、何でもやってみたいですね。今回の『セデック・バレ』は原住民の役でしたが、これからは原住民というイメージを脱ぎ捨てて、たとえば現代劇やテレビドラマでラブ・ストーリーやコメディなど、原住民から離れた役を演じて、演技の幅を広げていきたいです」
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アクション俳優が似合いそうですね。
ダーチン「もともと身体を使っていろんなことをするのが好きなので、アクションはとても向いてると思います。その他の役についても、いろいろな経験を積んで、磨いていきたいと思います」
これからの活躍を期待しています。
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上:日本版ポスターのモーナ・ルダオを真似るダーチン
左:全身はこんな感じ。ラフなスタイルもキマってます。
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ここでインタビューは終了。最後の最後まで「もっといろんな経験を積んで、いい俳優になりたいです」と、丁寧に答えてくれました。突然、俳優という世界に飛び込んだダーチン。演技については、持って生まれた天性の感に加えて、これからいろんな現場を体験して身に付けていくことでしょう。本作の後、舞台や中国大陸でのドラマにも出演しているダーチン。今年の秋には、2作目の映画『原来。[イ尓]還在』(監督:楊南倩)が台湾で公開予定です。これから俳優としてどういう風に成長していくのか、見守っていきたいと思います。
(取材日:2013年3月5日 マクザム本社にて単独取材)
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