Q:それは監督のスタイルなのですか?
監督「そうね。私はきちんと準備したいの。宿題が終わっていれば、後は実行するだけとアドバイスしてる。セットに入ってからどう撮影するかを考えるのは、時間とお金の無駄でしょ(笑)」
Q:スピーディーに決めてやりたいんですね?
監督「そうよ。きちんとやって、早く家に帰りたいもの(笑)。お金をたくさん節約しているのよ。ボリウッドでは、多くの監督たちが座って考え込んでいる間に、周りの皆は居眠りしてる。その間、プロデューサーたちのお金が飛んで行くってわけ。これは根本的なことなのよ。セットに入る前に準備しなさいって」
Q:では、他の監督たちの映画撮影はスローなんですか?
監督「そう見えるわね。私は一番早いと思われてる。急いで終わらせることでお金を節約しようとしているんだけど、そのせいで質を落とすようなことはしていないわ。準備はするし、仕事も早いけど、早く家に帰りたいからというのじゃないのよ」
●映画監督として
Q:ずっとシャー・ルク・カーン主演で映画を撮ると公言されていますが、3作目の『30人殺しのカーン』はアクシャイ・クマールが主演でした。この理由は?
監督「『30人殺しのカーン』は夫(シリーシュ・クンダル)と作った新しいプロダクションで製作したの。シャー・ルクとは、いつも彼の映画会社(レッド・チリ・エンタテインメント)で作っていたから、外の俳優を探したのね。その期間は、シャー・ルクは『ラ・ワン』など他の映画で忙しかったの。でも『30人殺しのカーン』は興行的にはあまり成功しなかった。やっぱり、皆はシャー・ルクの映画を観たいのね。だから、彼と一緒に仕事をする方がいいと思ったの」
Q:本作の撮影当時、妊娠されていたそうですが、同じく妊娠していたシャンティが殺されるシーンを撮るのは女性として辛くなかったですか?
監督「私が妊娠したのはその後で、映画を撮っている時は、まさか自分が妊娠するなんて知らなかった。悪役を演じているアルジュン・ラームパールはすごくイケメンで、皆からかっこいいと思われているので、彼をどうにかして皆から嫌われるようにしたかったのよ(笑)。トップ女優だから妊娠しちゃいけないとか、お腹に赤ちゃんのいる純粋な女性を焼き殺すとか、そのくらいのことをしないと皆がアルジュン・ラームパールを嫌ってくれないと思ったし、それだからこそ、最後にシャー・ルクが彼を殺すモチベーションにもなると思ったの」
Q:インド映画界で女性監督として仕事をするの大変ですか?
監督「女性として大変なことというと…妊娠中くらいかしら(笑)。シャー・ルクと撮影してる時にもどしちゃうとか(笑)。他には、女性だから特に困るということはないわ。でも、子どもがいるので、子どものために時間を無駄にしないよう、よく考えて行動するようにしてるわね。女性はそういう風にできるけど、男性はなかなかそこまで考えてくれないので、自分で率先して自分を管理するようなところはあるわ」
本作の公開直後に、ファラー監督が3つ子の赤ちゃんを出産したのは有名なお話。ここでお子さんたち(5歳になる男の子と2人の女の子)のかわいらしい写真を見せていただきました。子どもたちの写真を見せる時のファラー監督はやはり、愛に溢れたお母さんでした。
Q:ボリウッドは世界で一番映画を作っていますが、他国と比べてインド映画業界の今の雰囲気はどうですか?
監督「私たちは最大公約数で映画を作っているの。いろんな言語で映画を作らなくてはならないので。ハリウッドなら英語だけでいいけど、インドにはヒンディー語、タミル語、テルグ語、マラーティー語…といろいろある。さまざまな言語ヴァージョンで映画を作るのよ。ハリウッドのことも見ているけど、予算的には同じとはいかない。ハリウッドはグローバルな視点で作っているし、日本で同時公開みたいなこともあるけど、インド映画だと5、6年後にやっと公開されたりとかね。スタジオ環境もあまりいいとは言えなくてボロボロだし、政府はまったくサポートしてくれないので、まるで税金だけ取られてるみたいよ(笑)。ボリウッドも毎年頑張ってはいるけれど、環境はまだまだ苦しいわね」
Q:本作からは、ボリウッド映画産業の活気や勢いを感じたんですが。
監督「だといいわね。たしかに、映画作りのクオリティはよくなってるけど、私の映画は特にエネルギッシュなのよ。私の音楽シーンみたいに。でも、全部がそうじゃない。他の映画はスローで退屈なものもある。日本でも作品によって違うでしょ。でも、映画の質はかなりよくなっているわね。海外からたくさんの技術者を起用してる。ハリウッドのアクション監督とか、この映画でも水中シーンが得意な中国のアクション監督を使ったの。世界中の技術者を起用することで、質はかなり向上しているわ」
Q:日本の俳優と組んで映画を撮るのはいかがですか?
監督「もちろん、それはやりたいわ! 日本の撮影監督も好きだし、美術監督のデザインセンス、メイクのセンスも日本は優れているわよね。映画だけじゃなくて、日本全体がそう。食べ物もとても芸術的よね」
ここで「インドの俳優さんが日本人に輪廻する話は?」という提案に、監督も「グッドアイデア!」。オススメの俳優はイタリア人も演じたことのある阿部寛ということになり「インド人とのハーフとか?」に「それは見てみなくちゃ」と盛り上がりました。そして最後の質問は、次回作について。
Q:次回作『ハッピー・ニュー・イヤー』はどんな映画ですか?
監督「とても長い時間がかかったけど、やっと撮影をスタートすることができるの。『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』よりとても規模の大きなプロジェクトよ。5人の俳優と1人の女優が出演するわ。シャー・ルク、アビシェーク・バッチャン、南からはプリトヴィーラージなど。アンサンブルでとても面白いコンセプトの物語なんだけど、日本でアイデアをパクられると困るので、これ以上詳しくは言えないわ(笑)」
一同大爆笑で、愉快なインタビューは終了しました。数々のダンスシーンや映画作品と同じく、エネルギッシュなスーパーウーマンという印象のファラー・カーン監督。そんな監督が長年温めてきた次回作『ハッピー・ニュー・イヤー』の完成も楽しみです。そして『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』は、5月から全国で拡大公開される予定。インド流に映画を楽しむマサラ・ナイトを企画してくれる劇場もあるでしょう。観たら絶対踊りだしたくなるインド映画の魅力がギュッと詰まった、スリリングかつハッピーな作品『恋する輪廻 オーム・シャンティ・オーム』を、ぜひ劇場で体験してください。
(取材日:2013年3月14日 マクザム本社にて3媒体合同取材)
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