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ASICRO FOCUS file no.71

話題の洋画作品で活躍するアジアの俳優と監督たち

菊池凛子

強い視線が印象的な菊池凛子
(c)2006 by Babel Productions, Inc.
 28日よりいよいよ公開の話題作『バベル』には、俳優だけでなく、日本そのものがアジア圏の代表として登場します。異なる言語・文化圏で起こる出来事を、共通する問題意識で紡いでいく物語。イニャリトゥ監督たちによって切り取られた風景は、日本人のスタッフが撮ったかのような自然さで、まるで日本映画を観ているような気分になります。唯一気になったのは、若者がたむろする店で、やたらとお箸を使う姿が目についたことくらい。(西洋人にとって、お箸はアジアを表現する重要アイテムなのかも?)ラストで夜の東京を俯瞰に引いていくカメラワークは、暖かく感動的です。

役所広司

海外オファーが続く役所広司
(c)2006 by Babel Productions, Inc.
 ご覧になるとわかりますが、この作品での菊池凛子の存在感は圧倒的。訴えかけるような視線の強さ(眼力)と体当たりの演技で、数々の助演女優賞を獲得したのも納得です。今後、国際的な作品でも活躍していくことでしょう。

 『SAYURI』以降、渡辺謙と並んで海外作品への出演が増えている役所広司は、この後も、日本・カナダ・イタリア合作によるフランソワ・ジラール監督作品『SILK/シルク』(世界で最も美しい絹糸を探す男の物語で、日本の時代背景は幕末。主演はマイケル・ピットとキーラ・ナイトレイ)の撮影が進んでおり、年内には日本でも公開予定です。もう一人、事件がきっかけで菊池凛子演じるチエコと出会い、彼女の心を理解する若い刑事を演じているのは二階堂智。彼も『ラストサムライ』で注目された俳優で、その後は、映画、ドラマ、舞台と幅広い分野で活躍しています。


チョウ・ユンファ

中国の海賊を演じるチョウ・ユンファ
(c)Disney Enterprises, Inc.
 4作目は、5月25日の世界同時公開が待ち遠しい『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』。2作続いた海賊の物語も、カリブ海を飛び出してアジアの海へ。今やハリウッドでも確かな実績を築いているチョウ・ユンファが、シンガポールを拠点とする中国海賊の王サォ・フェンを演じ、2作目のラストで海の魔物クラーケンの餌食となってしまった、ジョニー・デップ扮するキャプテン・ジャック・スパロウを蘇らせるための重要な鍵をもたらします。「世界の果て」に旅立った彼らがどんな活躍をし、そして、どんな演技バトルを見せてくれるのかが楽しみです。

 最後にご紹介するのは、6月に公開予定のオムニバス作品『それでも生きる子供たちへ』。戦争や貧困、病気といった厳しい現実の中で生きている子どもたちを救うために企画された作品で、ユニセフやWFPも製作に参加しています。その主旨に賛同して集まった監督たちは、アルジェリアのメディ・カレフ、セルビア・モンテネグロのエミール・クストリッツァ、ブラジルのカティア・ルンド、イギリスのリドリー&ジョーダン・スコット父娘、アメリカのスパイク・リー、イタリアのステファノ・ヴィネルッソ、そして中国のジョン・ウーと豪華な8人。様々なテーマをもとに、子どもを主人公にした20分前後の作品7本が収められています。

桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)

『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』の桑桑
(C)2006 MK FILM PRODUCTIONS Srl RAI CINEMA SpA
 中でもラストに登場する、ジョン・ウーによる中国編『桑桑(ソンソン)と小猫(シャオマオ)』は必見。香港ノワールの父と呼ばれ、ハードボイルドなアクション映画で知られる監督ですが、ファンならお気づきのように、根底に流れる情の世界をスタイリッシュに潔く描くのも特徴。人間ドラマがしっかり描かれているからこそ、泣けるアクション映画が作れるわけです。そんな監督が初めて北京で撮影し、拳銃のない世界で子どもを主役に作り上げた作品はというと、短いながらもドラマが凝縮されており、「子供たちの希望を表現したかった」という監督のメッセージが見事に結実しています。そして、それはそのままこの映画プロジェクトのテーマとなって、観客にストレートに訴えて来ます。

 7本ともそれぞれに異なるテーマを持ち、よくできていますが、この作品に一番共感できるのは、やはり同じアジア人だからかもしれません。主人公となる2人の少女の演技には、実生活が反映されているとか。「子供たちに希望を持たせてあげたい」この映画を観れば、きっとそんな気持ちになるはずです。

 駆け足に5つの作品をご紹介してきましたが、この後も話題作がたくさん続きます。年内に公開予定のあるものは、清水崇監督によるハリウッド映画『呪怨/バンデミック』。こちらは香港のエディソン・チャンも出演。アンドリュー・ラウ監督が初めて撮ったリチャード・ギア主演のハリウッド映画『ザ・フロック』、パン・ブラザーズによる『ザ・メッセンジャーズ』、真田広之が参加したジャッキー・チェンの『ラッシュアワー3』もあります。

 さらには、もうじき開催されるカンヌ国際映画祭で初お披露目となる、ウォン・カーウァイ監督の『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(主演:ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ)、ホウ・シャオシェン監督の『赤い風船』(主演:ジュリエット・ビノシュ)も気になるところ。韓流勢ではRainやSE7ENの歌手としてのアメリカ進出が先行していますが、Rain は『サイボーグでも大丈夫』で俳優としても注目されている模様。また、イ・ビョンホンはすでにハリウッド進出を視野に入れて、英語の特訓中とのニュースも伝わっています。アジアの俳優や監督たちが活躍する場は、これからも世界規模で広がっていくことでしょう。


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更新日:2007.4.26
●back numbers
ハリウッドが描くアジア作品
最近ではハリウッドが描くアジアも、俳優や関係スタッフの努力もあって、より正確なものになってきています。『硫黄島からの手紙』のような秀作も生まれました。

ラストエンペラー

ラストエンペラー

監督:ベルナルド・ベルトルッチ
主演:ジョン・ローン
ジョアン・チェン

アンナと王様

アンナと王様

監督:アンディ・テナント
主演:ジョディ・フォスター
チョウ・ユンファ

ラストサムライ

ラスト サムライ

監督:エドワード・ズウィック
主演:トム・クルーズ
渡辺謙、真田広之

ラスト サムライ
ブルーレイ・ディスク版

*近日発売予定

SAYURI

SAYURI

監督:ロブ・マーシャル
主演:チャン・ツィイー
渡辺謙、コン・リー

硫黄島からの手紙

硫黄島からの手紙

監督:クリント・イーストウッド
主演:渡辺謙、二宮和也