老百姓はどこへいく
2004年12月1日
上海に観光に来られるみなさんの楽しみの一つに「租界時代の建物を見る」というのがありますが、今の上海は日ごとに、いや数秒ごとにその景色を変え続けています。
市の中心地の一部では洋館などが保存されているものの、その手入れはあまりよいとはいえず、また、人気スポット「新天地」のように「古き良き昔」を意識してはいるものの、まったく人の生活の息づかいを感じることのできなくなった場所もあります。
最近でこそ、昔の素晴らしい建築物を残そう、と大きく声をあげる人が増えましたが、すでに都市計画はその声にこたえられなくなっているのか、落ち着いた色合いの町並みがハデハデなミラーガラスの建物や、とってつけたような欧風建築のマンションになっていっています。
古い町を歩いていると、建物のあちこちに大きく「拆(チャイ)」と書かれています。これはその家が取り壊されることを意味します。今の上海では、工事をしていない場所はない、といっても過言ではないぐらい、あちこちで取り壊しや建築の工事が行われています。
住宅事情のよくなかった昔の老百姓(庶民)の家は、狭い部屋の中に何世帯も暮らす有様で、家に風呂やトイレがないことも珍しくありませんでした。それに加えて老朽化が進んでいるわけですから、それを取り壊して、皆がゆったり暮らせる快適な住居が用意されることは喜ぶべきことです。
しかし、現実はそんなに美しい話ばかりでもなく、不動産バブルまっただ中のこの地では、たくさんの立退料をもらって新しい家に移ると、慣れ親しんだその土地にもう一度住むことはほとんどできません。
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